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猟犬  作者: 次郎
43/45

42.秀吉の策略

この小説は、史実を基にした創作になります。


登場する人物、名称等も実在とはことなります。

「滝川殿」


 天王寺砦での軍議の後、一益は後ろから声をかけられた。


「おお、筑前殿。どうされた?」


 振り向いた一益の前にいたのは、羽柴筑前守秀吉であった。


「聞きましたぞ。何やら滝川殿の家臣が、上様のお命を救ったと。しかもその者、石山本願寺にも潜入して、間者としても功をあげておったとか。いや、良い家臣に恵まれておりますなあ。うらやましゅうござる」


 そう言って秀吉は、人懐っこい笑顔を見せる。人たらし、と呼ばれている笑顔である。


「いや、偶然が重なった結果でござる。めぐり合わせでござろう」


 一益はそう謙遜したが、このように褒められるのは、悪い気分ではない。


「いやいや、御謙遜めさるな。しかし、儂もその幸運にあやかりたいものじゃ。それほどの男、一度会ってみたいものですが……おお、そうじゃ、今からでも会えませぬかな」


「あいにく、その者は京に行っておりましてな。ほら、例の首の……」


「おお、なるほど。首の確認に行っているのですな。それは、残念でござる。ではまたの機会に、お願いいたそう」


 秀吉はそう言って頭を下げ、去っていった。

 一益は、秀吉との会話に何となく違和感を抱いたが、それが何かはわからなかった。



 部屋に戻った一益は、一人でぼーっと天井を眺めている。


(三郎が帰ってくれば、すぐにでも元服の儀を行わねばならんな。その後は、初陣じゃ。勝ち戦を、用意してやらねばならん)


 そんな一益のもとに夕刻、急な面会があった。

 牧野甚兵衛である。

 甚兵衛は数日前に、信長の危機を知らせるために、陣中にきていた。

 滅多に陣営に戻ってこない甚兵衛が再び帰ってくるということは、また早急の知らせがあるのだろう。


「殿、申し訳ございませぬ。この甚兵衛、取返しのつかない失態をしてしまいました」


 開口一番、平伏する甚兵衛に、一益は驚く。


「一体、どうしたのじゃ」


「昨年、殿とともに三郎殿が撃った苑也は、本物の苑也ではありませぬ」


「……何だと?」


 一益は、己の耳を疑う。


「おそらくは、羽柴様の間者と思われます。どうやら羽柴様は、我らより先に、苑也を使って石山本願寺に潜入することを考え、越前の寺を焼き討ちし、苑也を亡き者にして、入れ代わっていたようなのです。我らは知らず知らずのうちに、羽柴様の間者を殺し、その策をかすめ取っていたことに……」


「まさか、そんな……」


 そう言って絶句した一益は、以前、三郎に聞いた話を思い出した。


「そうか、石山本願寺で三郎に接触してきた男というのは、筑前殿の間者か!」


 おそらくその間者は、三郎をもともとの間者と思って、接触してきたのだろう。つまり秀吉側は、入れ代わりに気づいていなかったということになる。


「羽柴様やその間者は、策をかすめ取った我らを許しますまい。特に、間者を撃ち殺した三郎殿は、復讐されるおそれがございます。今、三郎殿は何処に?」


「三郎は今頃、京の寺にいるはずじゃが。しかし、落ち着け、甚兵衛。まだ筑前殿に知られているとは……」


 そこまで言って、あっと、先程の秀吉との会話を思い出す。


「しまった!筑前はもう、知っておる。しかも、三郎が京にいることまで……」


 一益は、自らの膝を力いっぱい叩いたが、後の祭りである。


「殿、すべての責任は、この甚兵衛にござる。この命に代えましても、必ず三郎殿を救って参ります。三郎殿が、どれほど重要か……」


「言うな、甚兵衛。儂も行く」


 こうして主従は、すぐさま京に向かって、馬を走らせることになった。

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