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75.結界の要

 アッシュがクロエを追って教会から離れてすぐ。ルキたちは、というよりもシャロは教会の中で祈りを捧げていた。

 祈ったところで意味はない、ということをイシュタリアに言われているがこれからのことが無事に片付きますように、と祈るくらいはしても良いだろう。主に精神衛生上の関係で。

 そうしてシャロが祈りを捧げている間、ルキとカルナの二人は怪しまれない程度に周囲を見渡していた。その結果としてわかったことは魔法によってこの場が監視されている様子はないこと。人を使って監視しているわけでもないこと。そして何よりも聖都を覆っている結界の基点はこの教会にある何かであること。それらのことがわかった。


 そんなことをしている三人は、ルキとカルナは祈りを捧げるような素振りを見せなかったが、それでもシャロの傍から離れない。ということで周囲の人間からはお祈りをしに来た少女とその友達。という風に見られていた。

 だからこそ何か言われることも、不審がられることもなく、何処か微笑ましいものを見るような目を向けらえていた。


「見られてるな」


「あぁ、こうなると少しやりづらいな」


「だな。まぁ、それでもアッシュに任されたんだからしっかりやらないとなー」


 そう言いながらルキは隠し通路や結界の要を見つけた場合には何らかのご褒美とかあっても良いよな! と考えていた。というよりもルキの中では既にそれが決定事項となっていて、そのことがより一層ルキのやる気を引き出していた。

 カルナはそんなルキを見てやる気に満ちているな。と思うと同時にここで成果を残せばアッシュは褒めてくれるだろうか。と考えていた。

 そしてアッシュであれば手放しに褒めるのではなく、そうか、と一言で成果を認め、やるじゃないか、とか流石だな、とかそういう言葉をかけてくるに違いない。と想像しながら自分が褒めてもらえた時のことを想像して少しだけほわほわしていた。


「……ルキさん、カルナさん。お祈りは終わりました」


「そうか、ならもう良いよな」


 そう言ってからルキはシャロとカルナの二人を教会の隅の方へと移動してた。

 これはなるべく人目につかないようにしてから話をしよう。ということであり、流石というべきかゆっくりと移動しながら人の視線を切り、先ほどまで自分たちを見ていた人々の意識から自分たちを外してみせた。

 そのことに気づかないシャロはルキの歩き方に疑問符を浮かべながらついて歩き、カルナは何をしているのかわかっているようで感心したようにルキを見ていた。


「流石だ、と言えば良いのだろうか」


「このくらい出来て当然だっての。なんたってアッシュが教えてくれたんだからな!」


 ルキは自慢げに胸を張り、当然のことだと言った。その表情はカルナに対して自分はそうやってアッシュから色々と教えてもらってるんだぞ、と自分の優位を示そうとしているようだった。

 これはアッシュに恋をしていると言ったカルナを牽制するためのものだ。とはいえ、純粋に自慢したかった、という面も充分に含まれていた。

 そうした意味がある行為だったのだが、カルナにそれがわかるわけもなく、純粋にそれを教えたアッシュと体得したルキに感心するだけだった。


「そうか。流石アッシュだ。恋をしたことに、間違いはなかったようだな」


「はぁ!? 間違いだろうが!! アッシュは! 俺の!! アッシュなんだよ!!!」


 平然と恋をして良かった。というようなことを口にしたカルナに対してアッシュは声を荒げ、アッシュは自分のものだ、というようなことを叫んだ。

 その声に何事か、と周囲の人間が見てくるがガルルと唸るルキの様子を見て関わらない方が良さそうだな、と判断したのかすぐにすいっと視線を外していた。


「ルキさん! 声が、声が大きいですよ! というかカルナさんってそうだったのですか!?」


 そうだった、というのはアッシュに恋をしている。ということだ。ルキを諫めながらもきっちりとそこに反応する辺りアッシュたちと出会ったばかりに比べて随分と余裕を持ってこうした場面に立ち会えるようになっていた。

 閑話休題(それはそれとして)。ルキはシャロに諫められたことで相変わらずグルルと唸るだけに留まり、カルナはシャロの問いに頷いて返した。


「あぁ、俺はアッシュに恋をしている。一目惚れ、というものになるのだろうか」


「そ、そうだったのですか……主様に恋……」


 平然と返された言葉にシャロは少しばかり戸惑ってしまった。それと同時に主様は色んな方に好かれているのですね、と感心する感情と、それを聞いて何故か胸の内がもやもやするような、奇妙な感覚に陥っていた。

 そのことにシャロは小さく首を傾げつつ、アッシュが大好きだと言って憚らないルキを見た。ルキは非常に不機嫌そうに、威嚇するために唸るばかりだった。


「あぁ、もう! 赤チビがアッシュに恋をしてるどうこう言っても知るかよ! こうなったら俺が一番活躍してアッシュに褒めてもらってご褒美に撫でてもらって独り占めしてやるからな!!」


 もはや欲望と願望を隠すつもりもなく、何としてもアッシュを独り占めしてカルナには絶対に渡さない。という強い意志を持ってそう宣言した。


「なるほどな。褒めてもらうだけではなく、褒美として撫でられる、か。それは盲点だった」


 しかしカルナの興味を引いたのは撫でてもらう、ということだった。

 それを見てルキが眉間に皺を寄せて更に吠えようとしていることを悟ったシャロは、それを阻止するために、そして自分たちの役目を果たすために声を上げた。


「あ、あの! そんなことよりもまずは色々と探さないといけないと思います! ですからひとまず落ち着きましょう! ね!?」


 自分の胸の中のもやもやはひとまず気にしないようにしながらシャロが声を上げれば、ルキはカルナを睨んだまま仕方がない、というように一つ大きく息を吐き、シャロを見た。


「それもそうだな。とりあえず見つけて、アッシュに褒めてもらえるようにしねぇと……!」


 それからふんすっ! と気合を入れるルキの切り替えの早さに感心するべきなのか。それとも自身の欲望に忠実に動いている姿に呆れるべきか。

 何にしてもとりあえずはルキの意識を逸らすことが出来て良かった。と安心しながらシャロはカルナを見た。カルナはカルナでそれもそうだな、と頷いているのでこれ以上の言い合い、というよりもルキが一方的にキャンキャン吠えることはなさそうだった。


「えっと……結界の基点と要を探す。で良いのですよね?」


「そうなるな。簡単に見つかれば楽なんだけど……」


「まずは見て回れる場所を探すべきだ。とはいえ教会、中庭、大聖堂の三か所しか行くことは出来ない」


「……簡単に立ち入ることが出来る場所にはなさそうですね……」


「普通はそうだよなー。まぁ、とりあえず見て回ろうぜ」


「あぁ、そうだな」


 何にしても見て回らなければ何も見つからない。三人は教会内をざっと見て回り、それから立ち入りが制限されていない中庭と大聖堂へと向かうことにした。



 結果だけを言うのであれば中庭にも大聖堂にもそれらしい物はなく、完全に空振りに終わってしまった。

 三人は中庭で花などを見ているフリをしながらこれからのことについて話をする。


「やっぱりありませんでしたね」


「まぁ、予想は出来てたけどな。修道院に隠してる可能性は?」


「ない、とは言い切れない。だが……修道院ともなれば教会の人間の目が常にあるはずだ。そうした場所に忍び込むのは少しばかり難しいだろう」


「それでも忍び込まないといけない、ってなればやるしかねぇけどな。っていうか隠し通路とかねぇのか?」


「んー……とりあえず、一度教会に戻りませんか? そっちはあまり調べていませんよね?」


「確かにそうだな。それにもしかしたらアッシュが戻って来てるかもしれねぇし」


「わかった。それにアッシュが視ればわかるものがあるかもしれないからな」


 とりあえずは一度教会に戻り、アッシュが戻って来ているなら合流しよう。という話になったがルキとしては何らかの成果が欲しいと思っていた。

 そうすればきっとアッシュは褒めてくれて、頭を撫でてくれる。更に言えば自分が要求すればご褒美まであり得る。というかご褒美はもらう。そんな考えを抱いていた。

 だから教会へと歩を進めるシャロとカルナの後ろをついて歩きながら何かないかと中庭全体をざっと眺めた。

 その瞬間、小さな光が目を刺した。が、ルキは反射的に手を翳すことで目が眩むことはなく、光の正体は何なのか、と光が差してきた場所を見る。


「……あん?」


 そこは中庭、というよりもそれに面している大聖堂を正面から見て遥か頭上。ルキは空中に何か光を反射している物を見つけた。


「おい、チビ、赤チビ」


 あからさまに怪しいと判断したルキはシャロとカルナの二人を呼び止めた。


「何ですか、ルキさん」


「何かあったのか」


「あれ、見るからに怪しくねぇか?」


 立ち止まり振り返った二人にわかるようにと光を反射している何かを指差した。

 何があるのか、と二人もそれを見て、ルキと同じように光を反射しているそれを見つけ、首を傾げた。


「あれは……何なのでしょうか……?」


「怪しいな。魔力の反応は……僅かだがある」


「……はい、そうですね。それに……えっと、聖都を覆う結界と同質の魔力、でしょうか?」


「ってことは当たりだな?」


「あぁ、その可能性が高いだろう」


「よっしゃ! それならとりあえず一つってことでアッシュと合流したら報告しないとな!」


 これで褒めてもらえる! と内心うっきうきになっているルキはいつものように尻尾を左右に揺らしながら撫でてもらうのも確定だな! と考えていた。

 それはそれなりの付き合いになって来たシャロには丸わかりであり、今回はずるいとかそういうことは言えないなぁ、と考え、自分も頑張らなければ! と気合を入れていた。

 そんな二人を見て、随分とアッシュは愛されているものだ。とカルナは思いつつ、ではどうすれば自分はアッシュに撫でてもらう、ということが出来るのか、思案し始めた。

ロリショタしかいないなぁ!!

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