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遥かな懐かしさ


殺したいほどに憎み、怒り、恨んだのに。

最も酷い最悪の神なのに。


愚かで最低な私は、それでも貴方を愛しているの。


心の奥底で固く蓋した心。

でもそれが、私を絶望から思い留まらせていた。


絶望の神でも、貴方だから。


ティーナの私が貴方と紡いだ優しく狂おしい日々は、真実だったから。


真実の欠片となった貴方を、私は一片残らず愛している。


「ゼノ、静かに眠って。もう私を求めないで。私が代わりに貴方を愛し続けるから」


彼の身体に身を寄せて、背中に回した手を動かし、頬にあてた。


「……………」


驚いた顔のままのゼノを見つめて笑った。


ゆっくり頬を撫でた。


とても簡単で、私には難しいことだった。


絶望の神には、憎しみや怒りや殺意は、心地よいぐらいの感情。

それが、絶望をもたらすのにほど近い感情だから。


対抗できる感情があるとするならば、それは希望。

それをもたらす、ほど近い感情は、愛情。


ゼイノスが、顔を歪めた。


「わからない。なぜだ…」


頬を撫でられ、されるがままにゼノは呆然と聞いてきた。


「貴方が貴方だから」


告げると、目を伏せてゼノの背後でロイが微笑んだ。


「愚かでどうしようもない女だ」

「そうね。でも、この気持ちは譲れない。絶対に」


私をじっと見下ろして、ゼノは諦めたようにゆっくり目を閉じた。


私は彼の両頬を包んだ。


「あっ、ルリ…!」


ロイの咎める声を聞いたが、私は止めなかった。

形の良い唇に、息を吹き込むように私は唇を重ねた。

意識して、優しく軽く触れるキス。


この行為に意味があるなら、それは愛情を伝えるため。

どこまでも愚かに、貴方を愛する。

それでいい。


私がゼイノスに唯一できること。

絶望なんかじゃなく、貴方に愛情を。


唇を離した時、微かにゼノは唇の端を上げて笑った。


後ろから近付いたロイが、ゼノの背に片手で僅かに触れた。

すると、ゼノの身体が少しずつ透明になり、ロイの手を通して彼に取り込まれていった。


「ゼノ…さよなら」


呟くと、寂しさがよぎる。

私は心底、愚かだ。


透けて完全に消えるまで、私とゼノは見つめ合っていた。

後には、私とゼイノスの力を全て取り戻したロイ。


静かな終わりの気配。

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