神と元神2
炎を破ったロイが、私を包む結界を強化する。
近くで見下ろすゼイノスの瞳に、私が映っている。
立ち上がり、彼を見据えると、怪訝な顔で私を見ている。
「どうした?俺をもっと憎め、恨め、怒り、殺意を抱け。」
「………もう憎んだりしていない。」
ゼイノスの瞳に、微かに焦りの色が浮かぶのを、私はしっかりと見た。
彼がロイに振り向きざまに、黒い光を無数に放つ。
「っ!」
避けたり、白い光で跳ね除けるロイを顎でしゃくり、ゼイノスは試すように言う。
「あの男を再び殺してやろう。お前の目の前で、苦痛に悶えながらゆっくりと殺したら、お前はもう絶望から逃れなくなるだろう?」
「ゼイノス…。なぜ私が何度も絶望の淵から戻れたかわかる?」
「何?」
「貴方を殺したいほどに憎んでいた」
一歩前に歩く。
「でも、それだけじゃなかった」
ゼイノスが、私とロイに同時に炎を放つ。
私に触れるかと思われた炎は、私を避けるように側を通っていく。
私は少しだけ笑った。
こんな簡単なこと…
気づいていたけれど、気づかない振りをしていた。
認めたら許されない気がして。
「しぶとく懲りない女だな」
苛立ちを滲ませた声でゼイノスが私を見た。
そして、一瞬で私との距離を詰めた。
「うっ!」
結界に手だけをねじ込み、ぐっと私の首に手を掛けると、反応を楽しむようにじわじわと絞め上げる。
「いいから、さっさと希望を捨て去れ」
「それは…無理よ」
言った途端に、そのまま引き寄せられる。
「なぜなんだ。どうして俺の元に来ようとしない?絶望するほうが楽なぐらいには、お前に苦痛を与えたはず…」
ゼイノスの絞め上げる手が止まる。
背後からロイが動きを止める力を操る。
「我が分身ながら、しつこい男だ。お前こそ諦めろ。ルリは俺の伴侶だ」
「ロイ…!」
頷いて、ロイがゼイノスの両手両足を力で縛る。
「くっ…貴様、何を?」
呻いて、今にもそれを破ろうとするゼイノス。
首を絞める力が弱まり、私は手から逃れた。
でも、至近距離で彼を見つめたままだ。
「ゼイノス。もう貴方を許すわ」
驚いてこちらを向く美しい顔から目を逸らさない。
「ルリ、浮気はちょっとだけだからな」
ロイが不機嫌そうに言った。
私は手を伸ばした。
後ろへ下がろうとするゼイノスを有無を言わせず抱き締めた。
きつく抱き締めた。
「離せ…っ!」
力で縛られたから?
それとも私が抱き締めたから?
ゼイノスは身動きできずに、固まっている。
「ゼイノス…ゼノ…ごめんね、私絶望なんてできないの」
冷たい感触が伝わるかと思ったのに、彼はロイと同じように暖かい身体を持っていた。
ロイと同じように、触れると感じる気持ちは…
「ゼノ、愛してる」
湧き上がるのは…
最後に残る感情は、ただただ…
貴方が愛しい。




