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神と元神


「この真上に、狭間がある」


冷たい風を受けながら、空を見上げる。


私には、何もわからない。

彼の力になれるかも、本当はわからない。


「常に希望を。それで充分」


ロイの力強い言葉。私がその言葉を噛み締めた時には、既に狭間に降り立っていた。


目の前に、美しい人がいる。

空中で座り、その人は待っていたみたいだった。


優しげな笑みを私に向けた。


「逢いたかったよ、ティーナ」


神々しい邪悪さを纏い、ゼイノスは微笑む。


私が僅かに目を奪われている間に、ロイがゼイノスに剣を振りかざした。


剣に、空中から湧いて出た水がまとわりつく。

それを薙ぐと、幾筋の水の刃がゼイノスに降り注ぐ。


ゼイノスは片手で結界を作り、それを払おうとしたが、力が上回り彼に刃が突き刺さる。


痛覚はないのか、微笑んだままだ。

手で刃を引き抜き払った身体に傷はない。


ロイが舌打ちする。


「やはり物理や魔法での攻撃は無効か。神って面倒…」


ゼイノスが手に黒い光を纏う。

それを見たと同時に、ロイが私を結界で守り、攻撃を仕掛ける。


剣の切っ先に白い光を纏う。


ゼイノスが黒い光を私とロイに向けて放つ。


目で追えないほどの早さで、ロイの剣から放たれた白い光が迎え撃つ。


黒と白がぶつかり合って、激しい閃光が狭間を照らす。


何もなく、岩が漂うばかりの空間で私は息を詰めて二人を見守った。


力では互角のようだ。


でも、ゼイノスは神だ。

ロイは人間の肉体だから痛みもあれば、体力の消耗だってあるはず。


治癒が使えても、ダメージが多ければ死んでしまう。


覚悟はできていたけれど、見ているのは辛い。


「ロイっ!」


炎がロイの周りを囲み、彼を炙ろうとする。

水を纏いながら、炎を破ろうとしている彼を見守っていると、ゼイノスが片手で私に黒い光を放った。


避けようと床に伏せたら、結界が有効だったらしく、光が弾けてとんだ。


「こちらへ来い。お前が来れば、この男が苦しむことはない」


口を引き結び、私は彼を睨んだ。


ロイから聞いて知っている。


私の絶望を糧としたら、きっとゼイノスは世界を闇で覆い尽くす。


希望を失った人々が、絶望で染め上げられたら、更に力を増幅させた神は、ロイの魂を取り込むだろう。


完全な神として、復活するために。


そんなことはもうさせない。

私は、もう絶望しない。


ロイがいるから。

いつも側にいるから。


自らの身体を抱き締めて、ゼイノスを拒み、首を振った。


彼がゆっくり近づいて来ても、怖くなかった。


「ルリ!」


ロイがゼイノスに矢のように光を跳ばす。


僅かな距離で、それが霧散する。


見下ろしてくる神に、私は目を合わせた。


大丈夫…


私の身体に痛みとして残るほどに、彼は想いを刻んでくれた。


その想いが身体から消えても、心に刻まれて…

いつまでも、刻まれて、残って、燻って、私を愛し続けてくれるから…



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