始まりの地へ2
「どうした?」
「あなたが永い時間、私より孤独だったんじゃないかと思ったから…」
「俺は人々と共にあった。俺は、人の愚かさや憎しみ悲しみ、それを時に乗り越える強さも…全てをひっくるめて好きだったから」
私の肩に額をつけて、慈愛の眼差しをする。
「でも、淋しかったんでしょ?」
「ああ。淋しかった。だから、今こんなにも嬉しい」
背中をゆっくりと指でなぞられる。
確かめるような動きに、私はびくっと身体を揺らした。
指を止めて、彼が耳元で囁く。
「大丈夫?」
「ん…ねえ…」
「うん?」
仰向けた私を間近で見下ろして、ロイが聞いた。
私は顔を赤らめて言ってみた。
「あなたを…誰と思って愛されたらいい?」
意味に気づいて、彼は優しく私を捕まえたままキスを繰り返し、合間に言った。
「今生の俺を…今の俺だけを見て。今生のルリは俺だけの…俺だけが愛せるのだから…」
彼の重みで動けなくなり、私は目を閉じた。
震えていたのは、彼の方。
私の身体を探る指先も…
貪欲に確かめる唇も…
熱に翻弄され、声を漏らした私を、熱く見つめる眼差しも…
私の素肌に重ねた彼の肌さえ…
全て震えていたのは彼の方。
熱に溶け合って、ひとつになって…
「幸せだ…」
と震える声を響かせた彼に、心を震わせ泣いたのは、私。
このまま、ずっとずっと抱き合っていたら、離れることなんてないのに。
「俺は、次の転生では記憶を失うかもしれない」
私の頭を片手で抱き、ロイは呟いた。
彼の肌の温もりが心地よい。
力の入らない身体を預け、私はうとうとしながら聞いていた。
「レイリイの時は、転生時に神格を剥いだダメージが強くて、本当に普通の人間として生まれた」
「…商才があって、金持ちだったけれどね」
私の言葉に、喉を鳴らして彼は少し笑った。
「俺が今生に力を持って生まれたのは、レイリイが死の間際にゼノに接触したことが、記憶の引き金となったからだ。だが、これが俺の最後の力」
「最後?」
顔にかかる髪を、ロイが指でかきあげてくれた。
「人間の俺に、以前の俺がかけた魔法は転生の度に効力を切らすだろう。この君を知る俺の記憶も、力も…だから、覚えている今生で奴を倒さなければならない」
また、忘れる?
不安と孤独が急激に押し寄せ、私は顔を上げ、彼を見ようとした。
「ロイ…わたしっ…!」
見計らったように、彼の唇が私の唇を塞いだ。
熱の余韻に吐息を絡める。
「…ルリ。ゼノを倒したら俺の力を一つ受け取って欲しい」
離れた唇が、囁く。
「前世の記憶を失う力」




