少年にお買い上げ3
年下だからと油断していた。
一応、私のご主人様で、尚且つ男だった。私を買ったのは、そういうことか?
立ち直ったロイは、私の服を見て呟いた。
Γ血で汚れたね。服買わないと…靴も。仕方ない、前借りするか。」
Γんん?」
彼に連れて来られたのは、街の端だった。森へと続く道の傍、拓けた所に幌の付いた馬車が6台。別に馬が7頭、草を食んでいる。見たところ、街街を渡りながら商いをしている隊商のようだ。
Γお帰り、ロイ。」
馬車と馬車の間から声がした。
商人に雇われたのだろう。料理人らしき男女が三人ほど夕食の根菜の皮を剥いでいる。側には火が焚かれ、鍋がかかっている。
Γ街に気に入った商品はあったかい?」
中年のふくよかな女が、気安く声を掛ける。
Γあ、うん、買ったよ。この女の子。」
そう言って、ロイは背中に隠した私をそうっと押し出した。服の血を隠すために、私の肩を両腕を巻き付けるようにして抱いている。馴れ馴れしいが、この際仕方ない。
Γルリって言うんだ。この子、売って…」
Γちょ!ちょっとー、みんなあ!」
さっきの女が、ふいに立ち上がり周りに大声で呼び掛けた。驚いたロイは、言いかけた口のまま止まっている。
Γみんなあ!来て来て!ロイが!ロイが!」
Γ何だあ?」
わらわらと人が集まって来た。私は下を向いた。
予想通りだ。ここでも晒し者か……
Γロイが!お嫁さん連れて来たよー!」
Γはい?!」
Γえ?!」
きょとんとするロイを、私は勢い良くキッ、と睨んだ。
Γ……………」
早く訂正して!睨む私に視線を合わせて、黙ったままだったロイが急に、にやっとした。
Γあー、うん、そうそう、僕のお嫁さん。可愛いでしょ?」
集まって来た人々に、そう紹介された。
……そりゃあ、奴隷だと言われるよりはマシだけれど、私の意見は無しか?
やはり、寝首を掻くか……
旅行中ですが、執筆できました。