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ミヴェラの都市は、鎮火が早かったため、石造りの建物などは残っているものも多かった。


神など名乗る男が、街を襲ったにも関わらず、大きな混乱はないのはなぜだろう?


「さすがミヴェラの民は、信仰心が篤い」


ロイが泊まっていた館から出ると、待っていた人々が平伏する。


驚異的な力で戦っていた彼を、すっかりゼイノスの生まれ変わりと信じている。


ルリが眠っていた間に、ロイは助けを求めて訪れる人々の傷を片っ端から治していたそうだ。


馬に乗った彼に引き上げてもらいながら、もしかしてロイはほとんど眠っていないんじゃないかと思った。


最後は私のせいで…

いやいや、彼が悪い。

なんだか、やけに積極的に私に迫ってくる。


前世でれっきとした夫婦をしていたから、恋愛の駆け引きを飛び越して、彼にはその段階なのだろう。


腰に手を回されて、すいっと馬の上に上げられて、ふと思った。


力の強い彼が、私にはその力を使わない。


欲にまかせたら、私の抵抗など意味なく、力でどうとでもなっただろう。

私が押し退けたら、押し退けられたフリをしていたのだ。


私に主導権を渡してくれている。

絶対に無理強いしない。

ロイは優しい。


くすり、と私は笑った。


「ん、何?」


私が笑うと、彼も嬉しくなるらしい。

同じように笑って聞いてきた。


「ううん。あなたが愛しいだけ…」


皆に聞こえないように、小さく言った。

目を細めて、ロイは照れたのか頬を掻いた。


それから、ナディアや皆にわたしとロイは別れを告げた。


またどこかで会いたいと言葉を交わして、私達はミヴェラをあとにした。


手を振る人々が小さくなるのを、私はロイの背に身体をもたれさせて見ていた。


「…君がいるから」


前を向いたまま、ロイがふいに言った。


「君がいるから、俺はここにいる」

「うん。ずっといてね。離れないでね」

「ああ、絶対」

「うん」


そっとお腹に回された私の手に手を触れ、ロイが言った。


「俺も君が愛しいだけだ。そして、俺が今いる存在理由のそれが全てだ」


長い年月、苦しんだ私の心を埋めるかのように、彼は癒しの言葉を何度も重ねてくれた。


「これから何処へ行くの?」

「ネレの丘」

「…え」


心臓がどきりと跳ねた。


「…………君と初めて会った場所へ」


古き時間を思い出したのか、ロイは遠くへ視線を投げた。


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