貴方の元へ6
起き上がった私は、彼を見て頬にキスした。
「君はますます煽り上手だ」
「なんのこと?」
「…悪女だ」
私は前世の時のように、彼に背を向けただけで服を着替え始めた。
途中で気付いたが、ロイの視線を背中に凄く感じる。
おまけに唾を呑み込む音まで微かに聞こえた。
困ったな。
正直、どう彼と接したらいいかわからなくなる。
レイリイのつもりだと、さっきみたいに今の若いロイの反応だったりして、どうにも難しい。
急いで着替える。
私がぱっと振り返ったら、その癖堂々と見ていたり。
昨夜、彼を拒否したのは、彼をゼノ、レイリイ、ロイの三人の誰と思ったらいいのか、わからなかったからだ。
昨日から見ていたら、仕種なんかや笑う表情などが、ことあるごとにゼノだったり、ロイだったりしていた。
そんな彼に抱かれるのは、まるで三人の男に抱かれるようで…
あまりに恥ずかしい。
嫌じゃないけれど、今の彼に慣れるまでは、なんだか抵抗感があるのだ。
「俺を苛むのは、君だけだよ」
着替えた私の肩にキスしてから、彼も着替え始めた。
……でも、これ以上彼に待てとは言えない。
着替えるロイの男らしい裸の身体がちらちらと服の間から見える。
男として、彼はとても美しい姿をしている。
求められたら嬉しいに決まってる。
彼は私が嫌だと言えば、いくらでも待つだろう。
それこそ耐えられないほど苦しくなっても。
紛れもなく愛してくれているから。
誓ったことが……ゼノを倒したらという誓いが守れなくても、次に彼が私を欲しがるなら、その時は身を委ねよう。
戸惑いがあっても、彼の魂だけを愛していることに変わりはないのだから。
でも、なんだろう。
私はまだ不安だ。
なにかの拍子に、また彼と離れてしまいそうで。
彼とようやく逢えたことが幸せで、奇跡のようで、余計に疑ってしまっている。
だから、もう不安にならないように、決着をつけたい。
もう終わらせたい。
転生した次の私が、最初から最期まで、彼だけを思いっきり愛して生きていけるように。
少々ふて気味の彼を置いて、私はナディアと二人で朝食をとった。
一口、二口彼女は食べてから、フォークを置いて、彼女は聞いた。
「私のお母さんは、また生まれ変わるのよね?」
「いつかはわからないけれど、必ず新しい生を生きるわ。」
「そう…ならよかった。」
ナディアは寂しそうに笑った。
「またいつか、お母さんに会えるかな?」
「会えるよ。たとえ記憶が無くても…だって…」
私はちらっと離れた席のロイを見た。
「私たちが、逢えたんだもの。きっとナディアも会える」
こちらに気づいたロイが、頬杖をついて微笑んだ。




