邂逅
「そう、そうか…」
馬の速度を緩め、ロイは私の手に手を重ねた。
「レイリイ!レイリイ!やっと逢えた!」
「…そうだったのか。この気持ちは…君を初めて今生で見た時に、感じた気持ちは…」
重ねた手に力がこもる。
「ずっとずっと逢いたくて逢いたくて…ようやく逢えて、俺は本当に嬉しかったんだ!」
私は心が震えて、どうしたらいいかわからなかった。
彼の背中に顔を押しあて、頬をすり寄せた。
ロイはそれを感じ取るように、顔を俯けていたが、しばらくすると、また馬の速度を上げた。
「…い、今、すっごく君をぎゅっとしたい!皆を助けて、ゼノを倒したら…いっぱいぎゅっと抱き締めていい?」
私は背中に顔をつけて頷いた。
嬉しくて泣きながら笑ったままだ。
「今度は必ず、君に子どもを産ませてあげたい!絶対幸せにしてあげる!」
「うんっ…」
「絶対、10人頑張るから!メチャクチャいっぱい愛するから!」
「バカっ!」
ああ、どうしよう…
私はこの人の魂が愛しくてたまらない!
*******
それからはお互い無言で道を進むことに集中した。
朝が来た。
私は薄く目を開けて、彼の背中の体温や、息遣いをずっと感じていた。
不思議だ。
ロイの姿は、レイリイとは全く違う。
それなのに、魂は一緒なのだ。
良かった!
私は知らず、同じ魂を愛していた。
そのことが嬉しい。
青空が曇ってきた。
だんだんと灰色に空が変わり、ぽつぽつと雨が降ってきた。
ロイが空を見上げている。
「…よし、雨を先にミヴェラに行かせた。奴は多分火を使うはずだ。気休めでも、防げたらいいんだが…」
ロイの魔法。
ゼノの力に負けないほどに強い。
以前は触れた相手の骨を折るようなことしか見てなかったのに。
天候を操るなんて
本当に勝てるかもしれない。
期待にかけたい。
そして、昼が来る頃に。
「よしっ、翔ぶよ!」
馬の背に膝を立て、私を抱えたロイがミヴェラまで翔んだ。
そこは想像したよりも、赤だった。
都市ミヴェラが炎に包まれている。
熱風と煙に私は目を開けるのが苦しいほどだった。
「ぎゃあああ!」
「わあぁぁあ!」
幾つも悲鳴が上がる。
私たちは、都市の建物の屋根から周りを見渡している。
逃げ惑う人々。
何人も道端に倒れている。
原因は火事のせいではない。
火に慌てて避難しようとした人々を、ゼノが一人一人黒い光で殺していた。
ミヴェラの上空に浮かび、ゼノが残酷な笑みを浮かべて、人々を眺めていた。
かざしたその手から黒い光が放たれ、また一人倒れた。
「ミヴェラの民よ。絶望を更に我に捧げよ!我はそなたらの愛する神ゼイノス!畏れおののき、我にひざまずくがいい!」
悲鳴がこだまする中、笑いながら人々を殺すゼノ。
狂ってる!
「なんてことを!」
恐ろしい光景に、怒りと悲しみが膨れ上がる。
そんな私とは裏腹に、ロイが先ほどから、目を閉じて意識を集中させている。
「…海…水滴…」
ぶつぶつ呟いたと思ったら、ミヴェラの港の辺りの海に変化が起こった。
海の水が、ゆらりと立ち上がり拳大の水滴へと分かれた。
数えきれないほどの水滴が都市を覆うように空中に漂う。
閉じていた瞼をロイが開けた瞬間、
ざああっ
と水滴が一斉に都市に降り注いだ。
火が消えていく。
小さな火種は降り続ける雨が消し去るだろう。
ゼノがちらりと私を見てから、手を地上にかざした。
その先には、ロッドたち隊商の仲間がいた。
「ダメよ!」
用意した矢を、私がゼノに放ったのと同時に、ロイが斬りかかる。
「ルリ、ロッドたちを逃がせ!」
私は頷いて走って行った。
ゼノの腕には矢が刺さっている。
でも、やはりダメージは与えられていないようだった。
翔びながら斬りかかるロイを軽くかわし、ゼノは矢をずるっと抜いた。
痛みもないようだった。
途方に暮れる。
どうしたらゼノを倒せるのだろう。
「ロッド!こっちへ!」
私が、彼らの元へ駆け寄ると皆驚いた顔をした。
「ルリ、ルリか?!」
ナディアやテレサが近づいて来た。
「良かった、無事で…」
「え、ではあそこで闘っているのはロイ?」
遠くてわからなかったらしい。
神と対等に闘う彼に、皆驚いていた。
「立ち止まらないで!ゼノの狙いはあなたたちだから!」




