絶望の始まり4
「あいつが、神なのか?」
家に戻り、泥だらけの服を着替え、ロイは呟いた。
家の中は壁が焦げていたが、水の被害は少なかった。
「…………………」
着替えた私は、さっきから彼に目を離せないでいた。
ゼノが言っていた。
『今生では力を持ったか…』
「…………………」
「ねえ、ルリ。」
「…え、何?」
顎に手をやり、ロイは言った。
「ゼノの力は、あの程度なのか?神にしては…思ったほどじゃないような…」
「え?」
どうだろう?
ロイの力が強いから、彼にはそう思えるのだろうか?
ティーナの時に出会った時は、ゼノが力を行使することは、私が死ぬ間際に見たぐらいでほとんどなかった。
わからない。
「ロイは、どうしてそんなに力が強くなったの?」
「…君と別れた後、強くなりたいとものスゴく思ったよ。今までは魔法が使えることを当たり前みたいに思っていたけど、いろいろ試して自分の力を把握してみたら、次第に…」
自分の手を見つめてロイが言った。
それから、目を見開いて何かを思い出したように、私を見た。
「…ねえ、ルリ。」
「な、なに?」
「ゼノは俺を殺すのを最後にするって言ったよね?じゃあ…最後ってことは…」
考えを巡らせば直ぐに思い至り、私は、さあっと背中に寒気を感じた。
「ロ、イ!ロッドたちは今、どこら辺を旅してるの?!」
その時には、ロイは立ち上がり、荷をまとめ始めていた。
「今なら…多分…」
宗教都市ミヴェラ。
神を祀る、その場所へ…
私はロイの手をしっかりと握った。
もう誰も喪いたくない!
「長い距離は翔べない。とにかく馬で行って頃合いを見て跳ぶ。」
混乱した水浸しの街から、なんとか急いで馬を用意した。
私が行っても役には立たないかもしれないが、お互いにゼノに狙われている立場なので、一緒にいるほうがいい。
それに…お互いに離れたくない。
私はロイの後ろに乗った。
彼の腰に手を回すや、馬を走らす。
「間に合えばいいのだけれど…」
ここから馬を走らせても、一日はかかる。
途中で跳ぶとしても…
不安で、気が急く。
私は彼の背中に顔をくっつけた。
次々と変わる景色を見ながら、それでも確かめたくてロイに言った。
「…ミヴェラには、よく商品の買い付けに二人で行ったね…」
「…え」
「ほら、いつかは船でミヴェラに行って、私、船で酔って甲板で吐いちゃって大変だった。でも、実は妊娠してて、つわりだったんだよね。」
彼の背中に、意識を集中させる。
「そうだったな、あれはスゴく嬉しかった。君はなかなか子供ができなくて悩んでいたから、とても喜んでいたよね。」
「……」
「お祝いにステーキ食べて、君はやっぱり吐いちゃって…」
ふふっとロイが笑った。
「懐かしいな、リン、ファ…?!」
何も言えなくて、私は彼の背中にぴったりと身体をくっつけて、抱き締める手に力を込めた。
「え……あ、れ?」
自分の言葉に驚愕し、ロイは私に顔を向けた。
「…お、れ…今?」
私は彼に再び逢ってから、何度涙を流しただろう。
永い永い年月、もしかしたらと…
いつかあなたに逢えるかもと思っていたよ。
それを願っていた。
ようやく、逢えた…!
私は愛しさが溢れるままに、泣きながら微笑んだ。
「あなた!レイリイ…!ようやく逢えたっ!!」




