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絶望の始まり3

「離れろ!」


身を起こして叫んだロイが、ゼノに剣を振りかざした。

だが、ゼノの周りに見えない壁があるようで剣が止まる。


「くっ…」


ロイが力をぐいっと込めると、その壁を通り抜けた。

あっ、と私が思った時には、ゼノの肩を剣が切り裂いた…ように思った。


無傷で、ゼノが笑った。

すっと片手を上げた彼を見て、私は戦慄した。


「避けて!受けちゃダメ!」


何度も見た黒い光が、彼の手に生じる。

ゼノが放つ光を、素早くロイは避けた。


続けて放たれるのを、地を転がるようにして避ける。

私はがくがくと震えが止まらず、それを見ることしかできない。

何度も目に焼き付いた血の光景が、私の心を身動きさせなくする。


体制を立て直したロイが、地を蹴りゼノに再び剣で攻撃する。


過たず、腹を突き刺したように思った。

だが、やはり彼は無傷。


「くっ!」


ゼノの放つ黒い光が、ロイの腕をかすめた。


途端に腕に絡み付くように、黒い光が傷口から身体を侵食しようと入り込む。


「ぐああっ」

「ロイっ!!」


腕を押さえて苦しむ彼に駆け寄ろうとした。


すると、目の前に瞬時に現れたゼノに腕を掴まれた。


「…ゼ、ノ!」


片手を引っ張られて、地面に足がつかない程に、吊るされる。

彼と同じ目線の高さで、顔をのぞきこまれた。


『どうしたものか…』


思案げに私を見つめ、彼の片方の手が私の顎を掴んだ。


『…お前はなかなか手強い。すぐに殺しても我が元には来ないだろう』


「許さない。夫を、子どもを…殺した!」


涙を滲ませ、私は精一杯ゼノを睨んだ。


無力な自分が、本当に悔しい!


『…そうだな、お前を生かしたまま、目の前で親しい者を一人一人なぶって、ゆっくり殺してみるのはどうだ?それとも、お前の肉体に苦痛を与え続け、何年もその状態を保っていたらどうだろう?』

「…最低よ。」


怯えを出さないようにするので、精一杯だった。


『その男をじわじわとなぶり殺しにしてみようか?』


ゼノが目でロイを見た。

背中に凍えるものを感じた。


「やめて!!」


顎を掴むゼノの手から、顔を上げて逃れた。


ダメだ!

もうたくさん!

嫌だ嫌だ!


「やめて、貴方の元に行くから…もう憎しみも何もかも捨てるから…お願い、もうこれ以上…」


ふっ、とゼノが微笑んだ。

彼の手が、ロイに向いた。


「やめてぇ!いやあっ!!」


黒い光が放たれる。


バシュッ!!

素早い動きで剣を薙ぎ、ロイはその光を払った。


えっ…!


いつの間にか、腕に絡み付いた光は、ロイが素手で引き剥がして消えていた。


「…何度も何度も…」


ぎっ!とゼノを睨みロイが叫んだ。


「ルリを苦しめるな!!」


剣を持ったまま、ロイが両手を横に広げた。


すると、彼の周りの湿った地面や木々から、吸い寄せられるように水滴が集まった。


すいっとゼノに手を向けたと思ったら、その全ての水滴が弾丸のように、彼に襲いかかった。


ゼノは私から手を離し、自分の周りを火で包んだ。


じゅっ、じゅっ


熱で水が蒸発する。


『…面倒だな』


それらを眺めて、ゼノは初めて不快そうな顔をした。


『いいだろう…。お前は最後にする』


そう言うと、ゼノは私をちらりと見てから、そのまま姿をかき消した。


「…ゼノ…」


最後に?

どういうことだろう?


私が呆然としていると、ロイが近寄って来た。

黙ったまま、いきなり抱き締められた。


「ロイ?!」


きつくきつく抱き締め、ロイは肩を震わせていた。


「…何だろう、俺…」


つうっと一筋涙を流し、彼は唇を噛み締めた。

わからないまま、彼の背中に手を回すと、思い出したようにロイがぽつりと言った。


「…君に巡り逢えた、それがとても…嬉しくてたまらない…」


「ロイ?」


私が手でロイの頬に触れると、彼は顔をすり寄せてきた。


「…何だろう、この幸福感…」

「どうしたの?…何か思い出したの」


私は恐る恐る…もしかしたらと思っていたことを、口にした。


「思い出す?」


ロイは黙って物思いに耽った。


「……………」


私はそんな彼の顔を、のぞきこむようにして見つめ続けた。ロイは、ゆっくりと顔を綻ばせた。


「あぁ…そうだね。この気持ち…俺が忘れていた気持ちだ。ずっとずっと前に感じていた俺の…気持ち。」

「……ロイ」


私は彼の頭を抱きかかえるようにして静かに泣いた。


「ルリ?」


証などない。

だけど…


私は確信した。



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