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絶望の始まり

「…………………」


私はふいに泣きそうになり、彼から目を逸らした。


「ルリ」


小さくロイが呼んだ。


「そっち行っていい?何も、しないから…」


そう言って私の返事も待たず、ベッドに入り込んできた。

ぎゅっと私を胸に抱き締めてくれた。


「…っ」


ずっと封じていた感情の波が溢れてきて、私は声を殺して泣いた。


彼は暖かかった。

すごく落ち着く。


「ルリ…愛してる」


優しく告げて、ロイは私にキスをした。


目を閉じて受け止めていたら、彼が唇を離して、そのまま私の首筋を辿るから驚いた。


「ロ…っ!?」


「…っ、ごめん、長いこと会えなかったから…嬉しくて…たまらなくて…」


ロイが私の肩に俯せて、手を私の服にかけようとした。


ドスッ!


私の膝が、彼の鳩尾に入った。


「ぐっ!えっ…だ、ダメ?」

「ダメ!」


悲しげな顔をしても、ダメ!


「ごめんなさい」


項垂れたロイは子どもみたいに謝った。


「以前の純真なロイがいい!」

「ええ?いや、以前の俺だって頭の中は、かなり…」

「いやだ、イメージ崩れる!」


そう言ってから、私はおかしくなって笑った。

つられて笑って、ロイは私をまた抱き締めた。


「ごめん、もうなにもしないよ」


私の頭に顔をくっつけて、目をつむって彼は言った。


「耐えてるの?ロイ」


私は笑いを隠して聞いた。


「…耐えてみせる。眠れないかもしれないけど」


彼の熱い息を感じ、私は目を閉じた。

彼の背中に手を回した。


「あったかいね、ロイ」

「…ウン」


「あなたと眠れて、なんだか幸せ」

「オレモ…」


「ねえ、ロイ」

「ン?」


彼の低い声が、心地よい。


「私も、ずっとロイを愛してた…逢いたかったわ」

「ルリ…」

「逢えて良かった。スゴく嬉しいよ…」


ロイが応えるように、私の額にキスをした。


そして、優しく繰り返し私の背中や髪を撫でるので、私は気持ちよくて、すぐに眠ってしまった。


*************


ひたひたと、私は歩いている。

いつから歩いているか、わからない。


前も周りも地面も黒。

黒い闇。

どこまで行っても、果てしない闇。


「…早く来い」


静かな男の声。

聞き覚えがあるその声に、私は身体を震わした。


ひたひたと歩く。


逃げているのか、求めているのか…

わからない、わからない


目の前に、男が立っていた。

闇から浮かび上がるように、彼だけがはっきり見えた。


無表情に手を差し出す男。


「おいで…」


いや、いやだ


首を振り、後ずさる。


「お前は、本当は望んでいるはずだ。俺の元に行きたいと…」


違う!


「早く楽になりたいと思っているだろう?」


なぜ、私を諦めないの?


綺麗な顔を揺らし、口元が弧を描く。


「完全な存在になるために、お前が必要だ。」


え?


どういうこと?


長い睫毛を伏せ、微かに笑い、男が言った。


「絶望の準備はできたか?愛しい魂。」


その直後、闇が消えた。


代わりに赤が空間を支配する。

赤い闇。

炎。

広がる血だまり


い、いや、いやだ

いやだあっ!


「ーリ、…リ!ルリ!」


目を開けると、私にかぶさるような近さにロイがいた。


「…ロ、イ」

「怖い夢を見たのか?」


震える私を抱きかかえ、ロイは落ち着かせようとしてくれた。


「…怖い」

「大丈夫。」


私は彼にしがみついた。


この暖かさまで喪わないように、しっかりと彼を離さないようにしがみついた。


「ロイ…死なないで…」

「大丈夫…大丈夫」


ふいに私を抱いていた手がぴくりと驚いたように動いた。

ぱっとロイが顔を上げた。


「…ロイ?」

「……」


寝衣のまま長剣を急いで背中に携えると、ロイは私を乱暴に肩に担ぎ上げた。


「きゃあっ!」

「逃げるよ!ルリ!」


訳がわからない。

でも、ひどく不気味な予感がした。


ロイの魔法で、私は気付くと街の外れの山にいた。

街を見渡せる景色の良いところ。


だけど、今は…


「きゃあああ!」


街が燃えている。


赤い炎

赤い、赤い…


見慣れた赤…!

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