少年にお買い上げ
皆の注目を浴びて、少年は奴隷商人を睨むように見ている。
Γ50銀。」
商人の掲示した額に、少年が顔をしかめる。
Γ30銀では?」
Γいや、45。」
僅かに下げて粘る商人。
………人の前で値段交渉。いい気分じゃない。
額に手を当て、少年が考える素振りを見せた。
Γ……いや、そんなに出せないな。25だ。」
呟きに、私はムカッとした。そんな私にちらっと目を向けて余裕ぶる少年。
Γなあ、この子売れ残ったら困るんじゃないのか?頬に傷有るし、性格も従順じゃなさそうだから買い手の寝首を掻くかもよ?」
そのつもりだ。もっと言うなら、アレも噛み千切るつもりだ。
Γ足元見やがって……40だ?」
食い下がる商人に、少年が腕を組んで顔を傾げた。
Γダメ、25!」
結局私は、メチャクチャ破格で少年にお買い上げされてしまった。売られること自体、そりゃあ嫌だけど、こんなに安く売られたことも腹が立った。
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ぶっすううう
Γね、君名前は?あるんでしょ?」
Γ………………………」
少年に手の枷を軽く引っ張られながら、私は不機嫌に彼を睨んだ。街の通りを歩いている。皆見ている。そりゃそうだ。
裸足だし、両手両足に枷を付けて、いかにも少年に買われましたって分かるんだもの。頬から血を垂らしているし。
Γ………」
少年が同じくらいの身長の私を覗き込んで困ったような顔をした。
Γごめんって。安く買われたと思ってる?でもあれ、僕の全財産だったからさあ。」
Γえ?」
通りがかった暗い路地に目をやり、少年はススッと私を連れ込んだ。
Γ何?」
警戒する私に、
Γいいからそこ座って。」
無造作に積まれた樽を少年が指し示す。
Γ……ああ。」
枷で不自由な私に気付いて、少年が身を屈めた。そしておもむろに私を抱き上げた。
Γきゃっ!」
Γあ、そんな声出すんだ。女の子っぽい。」
笑って、そっと私を樽の上に座らせた。
驚いた。私を軽々と…。あどけない少年は、男なんだ。
なんだか急に恥ずかしくなった。
出会いまでが、長かった。いや、前から会ってたか?