解放されて3
朝。
いつものように荷を背負い家を出る。
外の寒気に身震いする。
もう冬が近い。
コートを着て、マフラーを口元まで上げている。
フードを目深に被って、白い息をふぅっと吐いた。
まだ薄暗い明け方。
街道をちらほらと人がまばらに歩いている。
この時間が好きだ。
静かな落ち着く時間。
少しづつ明るくなる世界。
ゆっくり歩く。
今日は誰が来てくれるかな。
仕事が楽しい。
今の生活は、ハミルのような奴もいて危険は伴うが、それでも充実している。
自分の力で生きていることが嬉しい。
すれ違う人もほとんど無言。
まだ皆眠たいだろうに。
仕事熱心な人たちだな。
いつもの屋台を出す場所までもうすぐという所。
ふと前から来る人物を見て、私は目を見開いた。
「……!」
心臓が止まるほどに動揺していた。
背がすらっと高くなって、綺麗な整った顔立ち。
やや陰のある瞳。
ああ、思った通り……本当にカッコいい男になったね。
ロイ
*******
ドキン、ドキンと緊張して、寒さで強張る体に更に力が入る。
大丈夫、気付かないはずだ。
私は俯いて、さりげなくフードを引っ張り顔を隠した。
近付く青年。
スッ、とすれ違う。
彼の起こした微かな風を感じ、足が止まりそうになる。
だめ、振り向くな
ドキン、ドキン…
少しだけ歩いて、もう大丈夫だと思い、ばっと振り返った。
50メートルほど離れているだろうか。
彼は背を向けたまま、立ち止まっていた。
何かを考えているような素振りでじっとしている。
足を動かした。
そして、こちらを振り向こうとしたので、慌てて顔を反対側に向け、私は彼から遠ざかろうとした。
早足で歩く。
彼が振り向いたのかは、結局確かめられなかった。
耳を集中させたが、追いかけてくる足音はしない。
良かった。
どうやら気付かなかったみたいだ。
ほっと溜め息を吐いた。
ちりっと胸が痛い。
気付かれなかった安堵と共に、悲しさと寂しさが募る。
気づかれなくて良かった。
でも、気付いて欲しかった。
店に着き、開店準備をする。
品物を並べていたら、急に涙が流れた。
本当は、凄く逢いたかったよ…




