解放されて2
驚きで貼り付けられたように固まるハミルに警告する。
「さっさと帰らないと、本当に射るから。特に股とか。」
あ、それがいい。
こういう輩は、皆股を射ればいいんじゃないかな。
自分で言って思った。
「このやろう!」
怒りで近付こうとするハミルに弓で威嚇する。
私は、前世で夫に弓を習ってるし、その前の生でも、狩りの経験があるのだ。
「なに?不能になりたいの?」
矢を股に向けると、ハミルが青ざめた。
「く、くそ…」
無表情に私は言ってやった。
「次またちょっかい出したら、本当に矢を刺すか、ちぎるから。あんたハンサムなんだから、私なんかじゃなくても、もてるって。もっと可愛い子探しなよ」
決まり悪そうに帰って行くハミルを矢をつがえたまま見送り、私はふっと息を吐いた。
警戒しながら、家に入り、すぐに戸締まりをした。
小さな一人住まいの平屋。
遅い夜食を軽く作り、一人椅子に座り食べる。
それから洗濯をしてから二階のベランダに干して、風呂に入る。
今日の売り上げの計算をし、記帳してから、ベッドに入る。
本を読みながら、しばらく静かな時を過ごす。
「……………」
一時間ほど本をひとしきり読んで、閉じる。
そして、一度ベッドを抜け出して窓から外の景色を見つめる。
建物の間から、辛うじて見える。
私が前世で幼い時を過ごした宮殿があるのだ。
もうあれから半世紀。
私はかつてレイリイと暮らした街に、今いる。
レイリイ
彼の笑顔を思うだけで、心が温かくなる。
今でも彼が愛しい。
忘れたことなどない。
この街に来て、最初に共に暮らした屋敷を探した。だが既に無く、違う家が建って知らない人がいた。
宮殿には、前世のリンファの血縁がいるだろう。
だが、今の私には全くの他人だ。
リンファとレイリイのいた気配はもう跡形もない。
淋しさはある。
変わる前の穏やかなゼノ、優しかったレイリイ、純粋で真っ直ぐだったロイ
私は彼らをこの上なく…愛していた。
レイリイを愛した心のまま、ロイを愛していた。
それが不思議だった。
自分の気持ちに呆れる。
でも、嘘偽りの無い気持ち。
その気持ちが私の支えになっているのも事実。
彼らに愛された私は、幸せだった。
ズタズタに心がなるほどに…幸せだった。
だから、もう十分。
愛し愛することに、私はもう疲れた。
このまま平穏に一生を終えたい。
もう想い出として、この胸に封じていたらいい。
「元気でいるかな」
…………ロイ




