リンファの物語8
「…俺が、金で買ったと思っているか?」
燭台の灯りの中、リンファを抱いてレイリイは聞いた。
夜の静かな闇。
夫の重さが、愛しい。
「まさか…いえ、最初はそう思って…いたけれど」
触れてくる手を受け止めながら、リンファは言った。
「でも…心は…お金で買えな…い」
「そうだな。」
唇にキスし、レイリイは微笑んだ。
首筋を吸われ、身体の線をなぞられる。
「あ…あなた、レイリイ…」
愛される度、不安が押し寄せる。
必死で彼の背中に手を回す。
「ずっと…一緒にいて。一人に…しな、いでっ」
「リンファ…」
顔を上げ、レイリイは彼女の髪を撫でた。
「ずっと…」
「リンファは、いつもそう言って、泣いちゃうんだな…」
涙を指で掬って、レイリイは安心させるように彼女を抱く。
いつだって、泣いてしまう彼女を
いつだって、包むように抱く。
「なぜ、泣くんだ?」
「…幸せだから。あなたを愛してるから…」
「リンファ…笑ってくれ。」
そう言って、いつも優しくレイリイは彼女を求める。
甘くて、切なくて、苦しいぐらいの愛情。
幸せで、リンファは怖かった。
結婚して4年目。
リンファはお腹に子を授かった。
****************
胸が痛い!
引き裂かれる、心が!!
「あっ…ぅ」
限界だった。
私はロイの腕から逃れて、口元を押さえて床にうつ伏せた。
「ルリ!」
がくがくと身体を震わせながら、目を瞑り吐き気を抑えようとしていた。
「…はっ…うっううぅ」
「ルリ」
ロイが私を抱き起こす。
「うっあああぁ!」
「ルリ、大丈夫、大丈夫だから…」
心を引き戻すように、ロイが強く抱き締める。
どうして、どうして
私は、まだ正気でいられる?!
「救えなかった!レイリイっ…あなた…あなたっ」
「しっかり…」
「わ、私の赤ちゃん…産むことも、できなかったっ!…ごめん、なさい!ごめっ…」
「…ル、リ…」
「ゆる、して…」
呻くように慟哭して、私は引き裂かれた心を、今また引きずり出してしまった。
どうして、私はまだ狂わない?!
どうして、何度も何度も!
人を愛してしまう?!
何度も絶望の淵に心を寄せながら…
どうして、そこから逃れてしまうのか…
「もう…忘れたいっ…」
どうして、ゼノの魔法を受けたのか。
あの人を、愛していればこそ。
なのに、今は彼の力ではなく、憎しみにより、忘れないのではないかと思う。
あるいは、自らの贖罪ゆえに。
人を愛した罪のため
愛された罪のため




