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今生の私5

頭で考えるより体が動いた。

私は商人に体当たりするようにして、枷で不自由な両手でナイフを奪った。驚く商人をナイフで威嚇しながら、足元の連中に叫んでやった。


Γ穢らわしい!汚い目で私を見るな!!」


商品が言葉を発したことに驚いたように、男達が静かになった。そのまぬけな表情を見ると、何だか滑稽な気分になった。


口の端を上げて笑い、ナイフを自らの頬に当てた。ゆっくりと左目の下から唇の端まで…

ずっずっと切り裂いた。

痛みは後から来た。血がじわじわと傷口から浮き出て、やがて幾筋も細く流れていった。


Γふふっ」


ぽかんとしている彼らを蔑み、声を出して嗤った。


Γなっ、何しやがる!折角の価値が!」


商人がそう言って、離れた所にいた仲間と私の手からナイフを取り上げようと掴みかかろうとした。私はその前に、床にそれを放り投げた。


Γどう?これでも私を買うの?」


ざまあみろ、とばかりに私は挑発した。

血が顎から垂れ、水色のワンピースを肩から深紅に染めていく。何度も見た、赤。


売れ残ったらどうなる?最下層の売春宿…ううん、腹いせに酷い殺され方をするかな…

それでもいい。

静まり返った人々を、私は顎を引き悠然と見やった。


Γちっ!安くする、誰か買ってくれ!」


商人が苛立たしげにわめいた。


Γこれでも買う?私を買うならっ…!」


後ろから布で猿轡を噛まされ、暴れたらそのままうつ伏せに床に倒された。


Γんんーー!!」


私は自由になる目だけを動かして、周りを睨み付けて唸った。


Γ僕が、その人を買おう!」


突然、若い男の声が降ってきて目を見張る。

いつの間にか、観衆の一番前に出て来た少年が、目の前で手を上げていた。


こ、こんな子が…!世も末だ……



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