リンファの物語3
結婚式の宴が終わり、リンファはレイリイに向かい合って寝室にいた。
「…よろしくお願い致します。」
じっと見つめる彼に、手をついて礼をした。
覚悟していたとはいえ、やはり緊張はする。
ドキドキして、少し怖い。
かつてゼノと愛し合った仲だし、男女のあれこれは知っているが、まだ会って数時間の男と…
「……リンファ。」
そっと頬に手を当てられ、ぎゅっと目をつむった。
途端に、笑われた。
「大丈夫、何もしない。」
「え?」
姿勢を崩して布団に寝そべり、レイリイは「疲れた」と伸びをした。
「あんたは、まだ俺のこと全然知らないし…いきなりそういうの嫌だろう?あ、まずそこからっていうのも有りだけど?」
「いえ、知ってからで。」
リンファが即答して、レイリイはまた愉快そうに笑った。
「まあ、俺はあんたを以前から知ってるけど。」
「え?」
寝そべったまま、目だけを向けてレイリイは彼女を見た。
「この結婚、俺から申し入れたことだ。知らなかったろう?」
「ええ?借金のカタに売られたかと…」
驚くリンファに、ふいっと目を逸らし、レイリイはぼそりと呟いた。
「そんなんじゃない…お、俺はあんたを好きだったから。」
全く予想していなくて、言葉が出なかった。
ぽかんとしてしまった。
そんな彼女から目を逸らしたまま、レイリイは早口で言った。
「前に、何度も王宮に行った。その…お金の取り立てとかで。」
「…はい」
「あんたを何度か見た。一度目は、庭で。一人で本を読んでいたっけ。その時の横顔…とても綺麗だった…。」
言ってから、レイリイは自分の頭を枕で隠した。
「二度目に会った時は、王妃である母に怒っていたな。金遣いが荒いのを諌めていた。この娘はマトモな人間だと思った。ああ、気を悪くしないでくれ。」
枕で顔を隠したまま、もごもごと喋る彼は、なんだか可笑しかった。
リンファは彼の言葉を聞き逃さないように、彼に近づいた。
気づいて、ちらっと彼女を見てから、レイリイはまた枕で顔を隠した。
「…さ、三度目は、家来達に両親のことを謝っていたな。身分の高い者が頭を下げていた。見ているこっちが辛かった。俺は、どうにかしてあんたを助けたいと思った。」
全く知らなかった。
彼が見ていたことも、勿論、密かに想われていたことも。
「……。」
照れてしまった彼を見つめた。
「ぷぷっ!」
自然と顔がほころんだ。




