リンファの物語2
リンファは、輿に乗っていた。
茶色の髪を複雑に編み、美しい赤い衣を着ている。
王族の娘であるリンファは、嫁ぎ先に向かう。
今日は結婚式。
裕福な商人の元へ、リンファは嫁ぐ。
リンファは、政略結婚の道具となった。
王室の財政は破綻寸前。
見栄を張り、国王夫妻が贅沢をして、国民を省みなかった結果だ。
リンファは、その為に嫁ぐ。
相手は裕福な商人。
きっと王室を経済的に救ってくれるだろう。
「…どうでもいいわ。」
リンファの心は、虚ろだ。
まるで他人事だ。
目を閉じれば、いつもあの美しい男を思い出す。
「絶望も希望も、今の私には無いの。」
空っぽの自分。
虚ろな心。
愛した男に、殺された。
そんな記憶を引きずって、どう生きろというのか?
もう、どうでもいい。
私はこの生を、人形のように虚ろに生きてやる。
「着きましたよ、姫。」
家来に言われて、顔を上げた。
「…あれ?」
夫になる人は、裕福な商人だと聞いていたのに。
着いた家は、普通の二階建ての、まあ少し一般家庭より大きいかな、ぐらいの屋敷だった。
豪奢な城のような建物を想像していたリンファは、力が抜けた。
輿から出ようと、動きにくい衣装を摘まんで、立とうとした時、外からすっと手が差し出された。
その大きな手の持ち主をリンファは見上げた。
日焼けした顔。
肩幅の広い、逞しい体格。
茶色の少し長い髪を後ろでまとめて、簡素な出で立ち。
「ようこそ、私の花嫁。」
ふふっ、と嬉しそうに笑い、男が言った。
「俺があんたの夫だ、リンファ。名は、レイリイ。好きなように呼んでくれ。」
「……。」
つい、ぼおっと見とれてしまった。
顔は普通。
でも、身体から男らしさが滲むような、そんな魅力があった。
「リ、リンファです。どうぞ末長く。レイリイ…」
名を呼ぶと、はにかむように彼は笑った。
リンファより何歳か歳上だろうに、笑うと少年のようなあどけなさを感じた。
差し出された手に、手を置くと、ぎゅっと握られた。
ドキリ、とした。
温かくて、大きな手だった。
彼女の顔を見ては、にこにこするレイリイに、リンファは釣られて笑ってしまった。
仲良く、できる気がした。




