リンファの物語
次の日は、雨だった。
私はいつもと変わらなく、次の街でロッドと仕事の話をして、炊事や馬の世話をした。
ロイは浮かない顔をして口数が少なかった。
街で、ロッドの仲間の商人がスリに遭い、素早く犯人を捕まえ、指の骨を軽く折るぐらいには仕事をしていたみたいだけど。
夜になっても降り続ける雨を、私は馬車の幌の間から膝を抱えて見ていた。
「………………」
ゼノは…きっと私をずっと見ている。
私が、絶望するのに最適な環境になるのを待っている。
ぎゅっと自分の肩を抱いた。もうあまり時間がない。
ふいに、バサッと幌を開けて、ロイが入って来た。
私と目が合うと、そっと私を抱き締めて言った。
「…続きがあるんだね?」
黙ったまま頷くと、私の髪を撫でながら、ロイは静かに言った。
「聞くよ、話。その間こうしとくね。だから…大丈夫だよ。」
辛い話だと察してくれている。
私は、ロイに抱き締められたまま、目を閉じた。
そして、ゆっくりと口を開いた。
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ゼノに殺された私は、輪廻の輪を巡っていた。
くるくると…
水の流れに身を任す、一片の花びらのように。
そこは、金色に輝く大河のようだった。
何も考えず、苦しまず、痛みはない。
幼子が母の胸に抱かれるような安らぐ場所。
静かで、でも賑やかなそんな場所。
何年、何十年、その流れにたゆたっていたか…
わからない。
時間の感覚も、平衡感覚もない。
ふと気付いた時には、私は輪廻の流れから翔んでいた。
下には大地。
私は一筋の光となり、再び生を迎えた。
それが、私の前世。




