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今生の私4

観衆の一番後ろを通りがかったようだ。興味無さそうに歩いていたところを、ちらりとこちらを見たのは好奇心だろうか。

顔を巡らせた先で、私と目がたまたま合ったようだ。


年下だろう。まだ顔にどことなくあどけなさが残る。どこにでもある漆黒の髪色。遠くなので、はっきりとはわからないが目も黒だろう。目を引くのは、少年には不似合いな背中に携えた長剣だ。肩や胸、腕、脛に皮の簡単な防具を着けている。


珍しい。あんな少年が剣を振るうんだ。


同じようにこちらをじっと見ている少年は、口を半開きにして、どこか驚いたような表情をしている。

もう少し大きくなったら、きっとモテるんだろうな。なかなか凛々しい顔をしている。


Γどこ見てる!お前の番だぞ!」


手の枷を引っ張っられて、現実に引き戻された。

あの少年は、顔だけでなく体もこちらに向けてまだ見ている。


早く立ち去ればいいのに……


なんとなく少年に、みじめな姿の自分をさらけ出すことに抵抗を感じた。すっと少年から目を反らした。


がやがやと足元が煩い。男達の私を見る視線が、ねっとりと絡み付くようで気持ち悪い。彼らが私を見て何を考えているか……ああ、吐き気がする。


Γ出身地は、この国のミサン地域。歳は17だ。」


商人が私の髪を物のように雑に掴む。


Γ絹のような艶やかな黒髪。白い肌。宝石のような黒い瞳。おまけに生娘だ。」


どっと下卑た笑いが起きた。ぎりっと唇を噛んだ。


いい晒し者だ。


男達が喜ぶように、商人が口上を次々に述べる。ほくろが右太腿にあるとか、乳房は中くらいとか、大衆の前で恥を晒された。


こんな生き恥………!


羞恥で俯くと、すぐ近くにいる商人の腰に護身用のナイフがあるのが目に入ったが、直ぐに無理やり顎を掴まれ顔を上げさせられる。否が応にも男達の視線を受ける。


Γほら、笑うんだよ!」


これで笑えたら普通じゃない。私はまだ人でありたい。


Γさあ、値段をつけてくれ!」


唇を噛みしめ無表情を決め込む私に埒が明かないと思ったらしく、商人は値段交渉に持ち込む。

次々に男達が値を叫ぶ。その声をどこか遠くで聴いて思った。


買われた先で男の玩具となる自分を…


顎を掴む商人の腰の辺りに、なんとか指先が触れた。

咄嗟だった。

読んで下さりありがとうございます!二人がじゃれ合う?(一方的にギャフン)までお待ちください。

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