今生の私3
よろしくお願いいたします!
ああ、嫌だな。
両手両足には枷。高い板場に立たされる。そこを取り囲むように人々が見上げている。まるで処刑台みたい。
醜い奴ら……
ちっ、と舌打ちした。
あんなに入念に汚くしたのに体を洗わされた。服も着替えさせられ、今は安っぽい水色のワンピースを着ている。
まあそりゃそうか。
なるべく高く買ってもらうには、商品は見映え良くするものだ。
好奇心で見に来ている男達もいて、その下卑た視線ぎ気持ち悪い。
一言奴隷と言っても、その用途は多岐に渡る。子守や家事をさせる為の奴隷、仕事を手伝わす為の奴隷、出世の為に王族や貴族への貢ぎ物としての奴隷。扱いも様々。鞭打ち働かせるだけ働かせて、餓えたり弱って死ぬ使い捨ての者から、養子や伴侶として迎えられ家族扱いを受ける者までいる。
だが、今日の市は違う。
縦一列に並ばされて、私の前の娘が板場の正面、一番目立つ端に立たされる。彼女が一歩一歩力無く踏み出す度に、チャラチャラと枷の鎖が高く鳴る。
Γほら、ちゃんと笑え!」
奴隷商人が促す。娘は全てを諦めたのか無気力でぼんやりとしている。
もう一度、商人が笑えと命じる。
バカじゃないの?普通笑える訳無いじゃない。
なんだって、今回の市は…私を含めた娘達は性奴隷として売られる為に、ここに立たされているのだから。どんなに幸運でも、貴族の玩具止まりなんだ。
商人が、娘の歳や出身地などを口上する。そして、肌のきめこまやかさなどの美しさをアピールして高値を求める。
ああ、嫌だ。
競りに掛けられる娘の背を見つめる。
可哀想に、細い肩を震わせて。
こんなに澄んだ青空が美しい日なのに。
次は私の番か。
娘の値が決まり、買った男と周りの仲間が馬鹿みたいに和やかに満足気に笑っている。
手の枷を雑に引っ張られて、板場から下ろされた娘が先程までいた所に立たされる。
その時、ふと観衆達の中の一人と目が合った。
少年だった。