ティーナの物語4
「なぜ私?」
ある日、ティーナは聞いてみた。
「何が?」
いつものように、ティーナを抱き締め、ゼノは問い返した。
「綺麗な魂に安らぎを感じるなら、私よりも…もっと、綺麗な魂はあるのでは?」
人間のように小首を傾げる仕草で、うーん、と少し考えてゼノは答えた。
「確かになくはない。だが、君がいい。」
「え?」
「…私は君が誕生した時、眩しくて仕方なかったよ。きらきらして美しい魂。」
目を細め、ゼノは胸のティーナを見つめた。
「わ、私をずっと見ていたの?」
「ああ。どんな娘になるだろうってね。」
ティーナは、じんわりと胸が暖かくなった。
「理屈じゃない。私は君だから癒される。」
首を傾げた。
「わからないわ。」
「だから理屈じゃないって。惹かれたんだよ。うーん、そう、これは恋と一緒で…」
ふっとゼノは口をつぐんだ。
「…ゼノ?」
見上げると、ゼノは笑っていなかった。
「……一緒で……?」
目を見開き、ティーナを見ていた。
真剣な表情をしていた。
「どうしたの?」
訝しんで、ティーナはゼノの頬に触れた。
ぴくっとゼノが、大袈裟なぐらい身体を揺らした。
突然、ぎゅっと力を込めて、ゼノはティーナを強く抱き締めた。
それからすぐに離れ、無言で立ち上がった。
「ゼノ?」
驚いたような顔をしてティーナを見ると、そのままかき消えた。
Γ………え?」
誰もいなかったかのように、ティーナだけが残された。
ゼノは姿を現さなくなった。
ティーナは毎日、同じ場所で彼を待った。
神は気まぐれ。
神の考えは、計り知れない。
癒されたのだろうか?私は用済みなのか?
人間は好きだが、彼らの負の感情は、見守り続ける自分にはとても疲れるものだ、と言っていた。
悲しみ、憎しみ、怒り、恨み、殺意、絶望
見ていると、感じていると、気分の悪くなるもの。
神々が嫌って、人を見放した原因。
だが、それをひっくるめて人間が哀れで愛しい、とゼノは言っていた。
癒されて、またどこかへ行ってしまったのなら…喜ぶべきだ。
他の神々を見送り、一人孤独に世界に留まり、見棄てず、人間を愛する、優しいゼノ…
涙が溢れた。
淋しい。
ゼノと過ごした時間は、かけがえのないものだったと気付いた。
彼の笑顔を思い出す度に、愛しい気持ちが溢れた。




