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ティーナの物語3

三日後、ティーナは前と同じ場所でゼノに遭った。


「やあ、ティーナ。今日も気持ちがいい風だね。」


にこやかに笑う彼を見て、ティーナは青ざめた顔でひざまずいた。


「…ゼ、ゼ、ゼイノス・ク、ク、クロ…」

「え?もうばれてる?」


苦笑いをする彼の顔を見ることもできず、顔をうつ向かせて、ティーナはがくがくと緊張で震えていた。

まだ人と神の距離が近い時代。人は、神の存在を信仰ではなく知っている。ティーナは、疑いもしなかった。

…この前、忽然と消えたりしたんだ。

人間なはずない。


それにゼノなんて、畏れ多い神の愛称を付ける人間は、まずいない。


「ふふ、どうした?この間は本でぶっ叩いたのに、えらい態度が違うな。」

「そ、それは、貴方が変なことを…。」


顔を上げると、ゼノは静かに微笑んで言った。


「おいで。」

「……。」

「神の命令。」


恐る恐る近付くと、ゼノは手を伸ばした。



有無を言わさず、ティーナの肩を持って、抱き寄せた。


「ひいいー!」

「何もしないから、暴れるなよ。」

「もうしてる!いやあぁ」

「…ティーナ」


背中を優しくとんとんと叩かれ、ティーナは驚いた。神に触れられている!


「ゼ、ゼイノス様?」

「ゼノでいい。落ち着いた?」


ちらっと見上げると、ゼノは彼女を至近距離で見ていた。


ぼっ、と赤くなり、ごまかして聞いた。


「な、何しにここへ?」

「綺麗な魂を見に来た。」

「え?」

「私は、この世で一人だから…孤独だ。」


ティーナを抱き締めたまま、景色を遠くに見て、ゼノは言った。


「私は人間が好きだ。彼らに希望を与え、絶望を軽くする。それが見えざる私の力。だが、たまに疲れる。」


小さくため息をつき、ゼノはティーナに顔を寄せた。


「ひゃ!」


こめかみにキスされ、ティーナは驚いた。


「神とて、癒されたい。私の場合は、綺麗な魂を見ることが癒し…お前のような。」


うっとりするような笑顔に、ティーナはしばし見とれた。


それから、ゼノは毎日のように姿を現した。

何をする訳でもない。

座って景色を眺め、風が吹くのを気持ち良さそうに受け、そして落ち着くからとティーナを抱き締めた。


ティーナは、あまりに人らしい神に、次第に緊張を解いていった。


誰にも話さなかった。

さすがに信じてもらえないと思ったし、ゼノの安らいだ顔を見たら、誰にもこのひとときを邪魔させてはいけないと思ったから。


一ヶ月が過ぎ、二ヶ月が過ぎ、三ヶ月が過ぎて、ティーナはゼノと会うのが楽しくなってきていた。


天気の話。

今日の風の様子。

街の様子。

今読んでいる本の話。


そんな他愛ない話をして、雲の過ぎ行くのを眺める。

ずっと黙って過ごす日もあった。


そんな時、ゼノはティーナを懐にしまうように抱き、目を閉じてじっとしている。


初めは緊張やどきどきで、彼の腕からなんとか逃れようとしたティーナだったが、次第に慣れてしまった。


ティーナを抱くゼノは、彼女の魂を抱き、自らを浄化しているかのようだった。


ゼノに抱かれるのが心地よくなって、ティーナは

そっと彼に身を預けた。


雨の日は、ほら穴で雨宿りをし、暑い日は木陰で過ごす。


ティーナが行くと、彼は嬉しそうに笑う。

居心地のいい時が、ゆっくり過ぎていった。

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