ティーナの物語2
驚いて、固まって彼を見ていた。
彼は、ティーナの隣に座り、ずっとそこにいたかのようだった。
眼下に広がる風景を眺め、静かに微笑んでいた。
「…ここらには、とても穏やかな風が吹く。」
むにっ!
おもむろに、ティーナは彼の頬をつまんだ。
「なっ?!」
「あ、現実だった。」
感触を確認し、ティーナは呟いた。
「…。」
驚いた顔の彼に、ばつが悪くなり、頬をつまんだ手をそっと引こうとした。
ぱっと、その手を掴まれた。
「初対面で、許しなく私に触れたな…」
怒られるかと思った。
「す、すみませ…わっ?!」
掴まれた手を引っ張られ、ティーナは彼の胸に飛び込む形になってしまった。
「…うん、綺麗な魂だ。」
彼は、ティーナの腰に腕を回して抱き、息が届く距離で彼女を見下ろした。ひどく馴れ馴れしい。そして、眼が眩むほどの美形だった。
「わわ…」
「姿もまあ…」
顎を掴まれた。
「きゃ」
「…唇の味はどうかな?」
にこにこと近付く彼の美しい顔。
思わずドキンとして…
「いやーー!」
彼を…本でぶっ叩いた。バコッと鈍い音がした。
Γひどい…」
彼は自分の額を撫でて、言った。
別に珍しくはない黒髪、黒い瞳。だが身体のパーツ一つ一つが怖いぐらいに整っている。
思わずティーナが、いや見る者全てが見とれるほどの美しい顔立ち。
白い肌で鼻筋が通り、二重まぶたで、涼やかな目元。
青年は、にこにことしている。ま、眩しい!
「あ、貴方は誰?」
ようやくティーナがそれだけ言葉を発すると、少し沈黙してから彼は言った。
「私は、ゼノ。また会おう、ティーナ…綺麗な魂。」
イタズラっぽく笑って、ゼノはティーナの目の前で、忽然と姿を消した。
「…え?」
幻を見ていたのかと思った。




