私を嫌って
隊商の野営地まで帰り私が目を覚ますと、待っていたナディアが泣きながら抱きついてきた。
テレサは黙って風呂を焚いてくれた。
大きな桶に湯を入れた風呂の中、私は肌が赤くなるまで布でこすって洗った。誰かが用意してくれたらしく、香木を薄く削った樹片が袋に入れられ湯船に浮かんでいた。
爽やかな良い薫りがした。
風呂から上がると、私は自分のいつもの寝床に潜り込んだ。布団を口元まで引き上げて目を閉じた。外で微かに話し声が聴こえた。テレサ親子は、他の女性達の馬車で眠るらしく、私は一人の時間と空間を与えられた。
皆、私に何も言わず気を遣ってくれているのを感じた。有り難かった。
酷く心が疲れて、私は直ぐにまたうつらうつらしていた。
ふと髪を撫でられて目を開けると、傍にロイが座っていた。
彼は安心させるように微笑んでいた。それなのに、どこか傷付いた瞳をしていた。私は胸が抉れるようで唇を噛み締めた。
ロイは…私の心が傷付いて、一緒になって傷付いてくれている。そんなふうになるぐらい私を想ってくれていたんだ。解ってしまった。
Γ……ロイ」
私が手を伸ばすと、ロイはその手を取って握ってくれた。一つだけ訊いてみた。
Γあなたは、どうして私なんかを選んだの?」
目を伏せて言葉を選びつつロイが口を開いた。
Γ僕はただ…ルリが欲しかった。絶対に手に入れないと、って感じたんだ。理由なんてわからない。君は堂々として、とても綺麗で…あんな所にいる人じゃないと思ったから…だから…」
真っ直ぐ私の目を見つめ、ロイは言う。
Γ僕は君を、幸せにしたいと思った。」
指が私の目元に触れる。今度は彼が涙を拭いてくれた。
Γずっといる。今度こそ僕が護るから、ゆっくり眠って。」
そうして、ぎこちなく私の額にキスをした。
Γおやすみ。」
………どうしよう
私は懲りもせず、また人を愛してしまう…
私を嫌ってよ
お願いだから
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