奴隷じゃない5
Γナディアは、無事?」
Γうん。ナディアから聞いて来た。僕はロッドが帰って来てから、君達を迎えに行こうと思って歩いてて、ちょうど彼女に出くわしたんだ。」
Γ良かった…」
ホッと息を吐いた。
Γ……馬鹿だよ、ルリ。」
責めるでも無く、悲しそうにロイは呟いた。
しばらく黙って歩いた。
夕方には早い時間。すれ違う人々が、ちらちらと私達を見ている。私は顔を見られないように、ロイの首に額をくっつけたままだ。
Γ……ルリ、聞いてもいい?」
Γ……何?」
予想できた。
Γなぜルリは、奴隷なんかになってたの?どうしても腑に落ちなくて……また聞いてごめん。い、言いたくないなら…」
Γ売られたの、父に。」
遮って私は言った。息を呑むロイの気配がした。
Γ正確には、父の後妻かしら。二人とも跡継ぎの弟がいれば、女の私はいらなかったの。お金は欲しかったから、売ったってわけ。」
実の父に、愛情なんて無い。もう遠い人だ。
Γ私は前妻の子だったから、後妻の継母も目障りな私がいなくなって喜んでるんじゃないかな。」
Γ………」
黙り込むロイに、私は彼が聞きたいだろうことを話した。
Γ私が奴隷になって、どんな目にあってたか知りたい?」
Γルリ。」
Γ右の太腿にほくろ。」
Γっ………」
Γ奴隷商人は、何で知ってたと思う?」
ロイは歩みを止めた。
Γ奴隷になった女は、まず裸に剥かれて…」
Γル、ルリ、言わなくていい」
Γいいの。隅々まで見られて、胸の大きさやほくろの位置とか、生娘かどうか…」
Γルリっ」
Γ商品に傷は付けないの。価値が下がるから。ああ、生娘だと高いんだってね。」
私を支えるロイの腕に力が込められている。
Γただ少し男に見られて、触れられて……遊ばれただけ…」
早口で喋った。
Γ平気よ。」
Γ………」
顔を伏せたまま、自分に言い聞かせるように言う。
Γ私、平気よ……ふふ、キレイじゃないかもしれないけれど…」
私は、ロイがいっそ私を穢らわしいと嫌ってくれたらいいと思った。
止まっていたロイが、再び早足で歩き出した。
Γごめん…ごめんよ…」
Γロイ?」
声を震わす彼に驚いて、うつむき気味なロイの顔に触れた。
Γどうして、もっと早く…」
Γな、泣いてるの?」
ポタポタと涙を流し、ロイは呻くように声を絞り出した。
Γルリ、君にもっと早く会っていたら…僕は、必ず君を救ったのにっ!」
私をおんぶしているから、手で涙を拭うこともできないようだ。代わりに私は後ろから手を伸ばし、その頬の涙を拭いてあげた。
Γありがとう。私、救われたよ。だから大丈夫。」
Γ…ルリっ」
優しく彼の頬を指で何度も拭った。その内、彼の背に揺られて眠ってしまった。ロイの温かさが心地良かったから。




