奴隷じゃない
私はどうしたらいい?
周りを不幸にさせてばかりだった。私が心を開いて、相手を思いやればやるほどに。
それならば道端の石ころになってしまえばいいのに。誰にも気付かれないように。何も思わないように。
迷いながら口を開こうとした矢先、ナディアが足を止めた。
Γルリ。ここ…」
彼女の視線を追うと、いつの間にか人の少ない道に誤って入っていたことに気付く。
この街は、昔の建物を残しているが、新しい家と複雑に混在していて道が入り組んで、大通りから少し外れただけで迷いやすいのだ。
日中でも建物の陰で薄暗い小路で、首を巡らす。
Γ元来た道に引き返して…」
先の道に若い男が3人壁に寄りかかって座り、こちらを見ている。見るからに柄がガラが悪そうだ。彼らは目配せすると、やにわに立ち上がった。
嫌な気配に、ナディアの手を引っ張ろうとした時には、男達は目の前でにやにやと薄ら笑いを浮かべていた。後ろへ走ろうとしたら、一人に回り込まれてしまった。
Γへへ、可愛いね、お姉ちゃんたち。」
Γル、ルリ」
怯えるナディアを背にして、鞄から財布を取り出す。
Γ……お金ならここよ。」
私は男達が前に突きだした財布に目をやるのを確認して、振りかぶってそれを遠くへ投げた。
Γおっ!」
二人の男達が、後ろに落ちた財布を拾おうと思わず私達に背を向けた。ぱっ、とナディアの手を引くと私は走り出した。後方の男に体当たりをかまし、よろけた男を尻目に元来た道へ逃げる。
Γ待て!」
後ろを見ると、男達が追い掛けて来ていた。ナディアは動揺して足がもつれるようで速く走れない。
道の先が二つに分かれているのを見るや、ナディアの手を放す。
Γ真っ直ぐ行けば大通り、行って!」
Γルリ!?」
私は左の路地に走った。ナディアが必死でもう1つの道を走って行く。
3人の男達は、一瞬迷ってから自分の方に向かって来たので……ホッとした。
良かった、ナディアの方じゃなくて…
入り組んだ道、彼らを巻ければいいのだけれど。息が苦しくなった頃、私は先を見て苦笑した。
ああ、甘かったかな。
角を曲がった先は、行き止まりだった。
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