君の心を…
Γなあ、あいつ最近おかしくないか?」
ジルは、前を馬で行くロイを顎をしゃくって示した。近くを同じく馬に乗ったカッタが、にやにやと笑った。
Γそりゃあジルさん、野暮ってもんでしょ!ロイは新婚なんだから。」
二人はロイの護衛仲間だ。前を行くロイは、今日もルリの乗る馬車をちらちら見て、なんだかフラフラしている。
Γそれがだな…」
ジルがカッタに声を潜めて言った。
Γ新婚さんは、夜別々に寝てるみたいだぞ。」
Γえ、そうなんですか?今まで俺達と同じ馬車で寝てたのに、最近見ないから…そうかと思ってたのに。」
Γどうもロイは、サム爺さん達と同じ馬車で大体寝てるらしいぞ。昨日は、焚き火の傍で寝てるのを俺は見たぜ。」
Γへえ、そりゃまた。」
Γルリはテレサ親子と寝てるらしい。どうもテレサが、ロイからあの子をガードしてる感じだ。」
カッタが、プッと笑った。
Γ何で?」
Γ若すぎるからだろ?だって俺の故郷じゃあ、男は18以上で結婚できるんだぞ。」
Γそれじゃあ、ロイはまだ…」
Γ可哀想にな…」
二人は憐れんでロイを見つめた。彼の背中は、どことなく哀愁が漂っていた。
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何番目かの街中で得意先を回り、その一軒の店先で店主とロッドと仲間の商人と補佐をする私とで話をしていた。仕入れ票を確認し、売り上げの計算や利益を考えて、次の街で売る商品の種類と数量を話し合っていたのだ。
Γ今回は、新しく貴金属も仕入れて…」
Γこれは、ベリーアの国で売った方が…」
一通り交渉が終わり戻ろうとすれば、少し離れた所にいた護衛が3人、背後と左右を固める。その中にロイもいた。
おずおずと私に手を差し出しすので、その顔を窺うと、恥ずかしそうに視線を反らした。
Γ……人通りが多いから、その、スリとか危ないから…」
じっとしていたら、焦れたロイが私の手を握った。そして、そのまま引っ張るようにして歩き出した。ロッド達の後ろを、やや遅れて歩きながら、ロイは口を開いては閉じを何度か繰り返して…ようやく口を開いた。
Γルリは、なんで奴隷なんかにされていたの?」
Γ………………」
私は一度も皆に身の上話をしていない。彼らも気遣って、私が話すのを黙って待っているようだった。
Γルリ。」
Γ話したくない。」
Γ…………ごめん。」
握られた手を振りほどこうとしたが、ロイはそれでも、離してくれなかった。
怖いな…
ロイは踏み込みたいのだ、私の心に。そんなこと、罪深い私に赦されるはずがない。
緊張しているのか、じっとりと汗で湿った手で私の手を逃がさないように繋ぎ、彼は地面に視線を落とした。
Γ…………ルリ。君はどうして…心を開こうとしない?」
くすっ、と苦笑してロイを見やると、ゆっくり私の方を向いた彼は悲しそうな表情だった。
問いには答えずに、手を引いた。
Γ迷子になっちゃうわ、早く行こう。」
なるべく長めに書けたらと奮闘中です。




