死からの始まり
新しい作品です。よろしくお願いします。
Γどうしてっ、どうしてえぇ!!」
私は絶望の中で泣き叫んでいた。周りは全て、赤。
私の生まれ育った村が燃えてる。
家が燃えてる。
家の中にいた父と母と妹も、燃えてる。
座り込んだ私の膝の上には、こと切れた兄の上半身が引っ掛かるようにして乗っている。私を守ろうとして庇って、彼の力を受けた。
兄の生温い血溜まりの中に私はいる。私の体は血塗れだ。
両腕に抱えた幼い弟。その子の体から滴る血が、私の腹と胸を赤く染める。彼らの赤さが、私に気を失うことも許さない。
こんなの、現実じゃない!
ちがう!ちがう!ちが、う!!
生きてるのは私だけ。少し先に佇む彼を除けば。
ガクガクと震えながら、私は信じられない思いで彼を見ていた。
彼が、ゆっくりと振り返った。微笑んでいた。
優しいと錯覚するほどの、柔らかい笑みだった。
『ああ、君の絶望は心地好いな。』
低く、よく通る声がうっとりと言葉を紡ぐ。
私は声を出そうとした。せめて今の自分にできることがしたかった。たとえ命を失っても…
唇がわななく。胸の深いところから重く冷たいものがせり上がる。必死で睨み付けた。
Γうっ…く」
笑顔の彼を、目で射殺せたらいいのに!
Γ……ゆ、許さない、許さないわ!!」
力を失った弟を抱き締めて、震えながらも唸るような声を振り絞った。
軽い足取りで彼が近付いて来た。
目を逸らさず、私は呪いの言葉を吐き出した。
Γ私は死んでも…また、う、生まれ変わっても、いつか必ず貴方を…お前を殺す!必ずいつか!殺してやる!!」
覚えているのは、そこまで。
彼の凄絶なほどの美しい笑み。
赤い世界。どす黒く深い暗闇の絶望の世界。