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「さてと。じゃあまとめに入ろうか」
もう少し話を聞きたくもあるけど、活動時間を越えてまで話し合おうなどとはこの部の人間は考えない。
他人から相談を受けておきながら何と無責任なと思われるかもしれない。
が、自らも悩み多き学生の身である俺達に対して、更に大勢の生徒の悩みにまで責任を持てだなんて、無茶もいいところだ。
しかもやりたくてやってるわけでもないのに。
そもそもこれは学生の部活なのだから、このくらいの緩さでむしろ丁度いいのだ。
「で、今日出た案はこんな感じだ」
ただそうは言っても、最低限相談に対する返答という形は保って欲しい。
何だよこれ。
・出世をする(問一.弟子が師匠より出世することを出藍の誉れというが、出産の日に知らない人が駆けつけることは何というでしょうか)。
・お金を持つ(問二.アネモネ先輩の屋敷にある観葉植物は大体八八○センチくらいあるが、あんご先輩の下半身の逸物は大体何センチくらいあるでしょうか)。
・立派な息子を持つ(問三.立派な息子を持つことを鼻が高いというが、立派な鼻の穴を持つ人のことは何というでしょうか)。
・スポーツや芸能界で活躍する(問四.スポーツや芸能界で活躍することをBIGになるというが、卵になることは何というでしょうか)。
・手でしごく(問五.なめられればなめられるほど、たってくるものなーんだ)。
・手で揉む(問六.胸のことをバストというが、浴槽の上に乗せるフタのことを何というでしょうか)。
・高いところに行く(問七.高いところに行くとスナック菓子の袋が大きくなりこれを膨張というが、絶好調なのは誰でしょうか)。
「酷すぎだな……」
そしてまた案の後ろに何か落書きがされてるし。
落書きと言うか、これはクイズ? 一つはなぞなぞだけど。
「誰だこんなふざけたものを勝手に打ち込んだのは」
「あ、それはわたしとアネモネ先輩です。案を出し終わった後随分暇があったので、アネモネ先輩から作ってみようと提案がありまして」
どうして暇があったからといってこんなクイズを作成しているんだ。
そんなことより少しは議論に混じるとか他の案を練るとかしてくれよ……。
「一応聞いておくけどセレナ、これらのクイズの答えは?」
正直どうでもいいことこの上ないのだが、それでも問題を目にしてしまった以上答えが気になってくる。
「それはあんご先輩が自分で考えてくださいよ」
「ごめん全く見当もつかないんだけど。何だよ問一の『出産の日に知らない人が駆けつけること』って」
仕方なく少し考えてみるも、結局答えは浮かんでこずギブアップを宣言する。
「じゃあ答えを発表します。『弟子が師匠より出世することを出藍の誉れというが、出産の日に知らない人が駆けつけることは何というでしょうか』答えは、『出産の日誰』」
「へえ……ん? 出産の日誰?」
何だそれ、そんな言葉があるのか? 初めて聞くけど。
「答えられなかったので、あんご先輩は一点減点です」
「点数まで付けられるのかこのクイズ……それで次は?」
「次はさすがに分かりますよね、自分の体ことなのですから。ラッキー問題ですよ?」
「確かに自分の体のことだけど、知らないから」
身体測定でそんなところを計ることも、個人的に計りを当てることもないのだから。
「と言うかもし分かったとしても、お前達が正解を知らないじゃないか」
「わたしは知ってますよ? あんご先輩の逸物の長さ。だから言ってみてくださいよ」
「言いません」
そんなことを言って、これを期に情報を得ようとしてるに違いない。
「じゃあ答えられなかったので一点減点ってことで」
「む……ま、まあいい。次は? もう答えを教えてくれ」
「端からギブアップですか? 『立派な息子を持つことを鼻が高いというが、立派な鼻の穴を持つ人のことは何というでしょうか』答えは『穴がデカイ』です」
「だから初めて聞くんだけど! さっきから知らない言葉ばっかり!」
本当にそんな定型句あるのか!? いつ使うの!?
「初めてですか、意外と無知なんですねあんご先輩って。では問四はどうですか?」
「全然分からん」
「『スポーツや芸能界で活躍することをBIGになるというが、卵になることは何というでしょうか』答えは『エッグになる』に決まってるじゃないですか」
「エッグになる?」
また初耳の言葉だ! そして人は卵にはならない!
「じゃあ次の問題です。『なめられればなめられるほど、たってくるものなーんだ』」
「腹だよ! 俺は今腹が立ってるよ!」
こんな意味不明な問題で減点だの無知だのなめたこと言いやがって!
「正解です。凄いですねあんご先輩。わたしなら絶対『逸物』って答えているところです」
……褒められても全然嬉しくないのはどうしてだろう。
「では問六、この勢いに乗ってじゃんじゃん答えちゃってください」
「『胸のことをバストというが、浴槽の上に乗せるフタのことをなんというでしょうか』こんなの普通に『風呂のふた』だろ」
「残念、『バス戸』でした!」
まただなぁ……また初めて聞く言葉だなぁ……。
あれってお風呂の戸って位置付けだったのかぁ……。
「では最終問題です。『高いところに行くとスナック菓子の袋が大きくなりこれを膨張というが、絶好調なのは誰でしょうか』」
「知らないよ。あれか? 出産の日に駆けつけて来た知らない人か?」
面識のない妊婦の出産日に駆けつけるとか、絶好調もいいところだと思うけど。
「残念、答えは『校長』でした」
「知ってる言葉だった!」
でもそれただの駄洒落!
「では成績発表ですよあんご先輩。七問中一問正解なので、マイナス六点です」
ゼロ点からの減点方式だったのか……何と言うかほんと、何もかも理不尽なクイズだな。
「はあ……疲れた」
こんなことになるなら、どれだけ気になったとしても答えなんて聞かなければよかった。
と、そんなことを嘆いている場合ではない、気持ちを切り替えなくては。
「ごほん。えー俺の点数も発表されたということで、そろそろ今回誰の案を選ぶのかも発表したいと思います」
今回選ぶのはハッピーの『高いところに行く』という案です。
俺は特に勿体付けることなくそう発表した。
しかしそれに疑問を呈する者が一人。アネモネだ。
「あんごさん、どうしてわたくしの案を選んでくださらなかったのでしょう。あんなにたくさん出したというのに」
「確かにお前はたくさん案を出してくれた。でも残念なことに全て関係のない案だろう?」
意味のある案を複数出してくれたのなら選出される確率は上がっただろう。
でも無意味な案をいくら並べてくれたところで、そうはならない。
「セレナも同じだ。だからハッピーの案を採用した。分かるか?」
正直ハッピーの『高いところに行く』という案も、問題だらけだとは思うけど……。
今回は他に選択肢がないのだから仕方がない。
アネモネを説得し、俺はメールの返信ボタンをクリックして文面を作り始める。
「なあなああんご。ワタシの案って言ってるけど、ワタシそんな案出したっけ?」
「さてはハッピー、お前三歩歩いたな?」
「んー、案じゃなくてパンを出した覚えならあるんだけどよぉ」
「俺にはパンを出された覚えはないが?」
「そうか? じゃあ出したのはナンだったかもしれねえ」
「ナンもパンだけど?」
まあいい。ハッピーが自分の出した案を覚えていようといまいと、そんなことは相談者には関係のないことだ。
「最終的にどうするかは、ご自分で選択していただければと思います。それではまた何かあれば、ご相談ください」
いつもと同じ文で締め、ミスがないかチェックをした後送信ボタンを押した。
「よし送信完了。それじゃあ帰りますか」
PCをシャットダウン。今日の部活、これにて終了。
読んでくださってありがとうございました。




