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モンスター娘@問題があーる!  作者: 高辺 ヒロ
7.ノープロ部
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終幕

 果たして『ボイコットをする』などという案を出した結果、ノープロ部の生徒達がどうなったかと言うと――。


 自分からの相談に自分で返信のメールを送ってから数週間後の放課後。

 俺は、セレナ、ジュリア、アネモネ、ハッピー、キュートの五人を連れて、グラウンドの草引きを行っていた。

 俺達が実行した抗議活動のせいで、授業や部活動に少しばかりだが支障を来たしてしまい、関係のない人達に迷惑をかけてしまったのだ。

 そのせめてもの罪滅ぼしとして、最近自主的に始めたのである。


 ただそんなちょっとした予想外のできごとはあったものの、活動自体の結果はこの上ないものとなった。

 俺達の叫びはきっちり届いた。

 つまり、私立紺成高校における部活強制ルールは、見事なくなったのだ。

 抗議活動開始からまだ一ヶ月も経っておらず、当事者の俺でさえ何だかあっけない幕引きだなと感じるのだが、そこは読みどおり、問題があるようなルールが普通に運用できていたのは、そのことを世間が知らなかったからにすぎなかったのだ。

 きっかけは抗議活動の模様が、地元紙に取り上げられたこと。

 最初は誰の目にも留まらないような、本当に小さな記事だった。

 しかしやがてはその記事がネットで紹介され、最後には全国ネットの報道番組でも議論されるようなところにまで発展した。

 強制入部というルールに関しては、賛否両論ちろんあった。

 が、校長は事態の素早い収束を望み、早々にルールの撤廃を発表したのだ。

 そんなわけで俺達は、無事目的を達成した。


 とは言え最初は手放しでは喜べなかった。

 何せこんな事態を引き起こしてしまったのだ、今後校長に睨まれるのは必死。

 だが志藤先生によると、対応が迅速だったとか、生徒に高い自主性が育まれているだとか、そんな風に多方面から賞賛され、校長の評価は今回のことで下がるどころかむしろ上昇中らしく、機嫌もいいらしい。だから心配ないだろうとのこと。

 大人ってずるいなと思わなくもないが、別に校長と対立したり彼の評価を落としたかったわけではないので、これで丸く収まったのなら万々歳、全てがうまくいった形だ。


 しかしながら、俺達は俺達自身でそのうまくいった結果を台無しにしてしまった。

 実はノープロ部、校長の機嫌がいいおかげなのか、それとも騒ぎのせいでうやむやになってしまっただけなのか理由は定かではないが、廃部にはならなかったのだ。

 そして俺達部員は、望まれたわけでも強制されたわけでもないのに、また示し合わせたわけでもないのに、全員が全員結局部活を続けることを選択した。

 何のための抗議活動だったんだという感じだが、何と言うか今回の件で、皆で力を合わせてみたり他人の先頭に立ったてみりしたわけだけど、そのことに全員、達成感ややりがいみたいなものを感じてしまったのだ。

 だから他にやりたいこともないし、本当の本当に嫌になるまで続けてみるのも悪くないか、みたいな心境にそれぞれがなったわけである。

 自分で言うのもなんだが、あれだけやる気のなかった俺達がこんな風に思ってしまうとは、やはり部活をすること自体は全然悪いことではなかったらしい。


「ふ~、皆ご苦労さん。そろそろ切り上げて部室に行こうか」

 俺は一つ伸びをして、雑草が山盛りになったバケツを持ち上げた。

 校舎側面からグラウンドを見下ろす大時計を確認すると、もうすぐ部活が始まる時刻。

 ここにいては他の部の迷惑になるし、俺達にも相談が待ち受けている。


「ですがあんご先輩、草を抜くのをやめ部室に行って、そこで何をするんですか?」

「何ってセレナ、分かってるだろ?」

「分かってるだろって言われましても……あ、分かりましたっ」

「その顔は分かってないから何も言わなくていい」

「草を抜くのをやめて、今度は部室で先輩のアソコをヌくんですね!」

「言わなくていいって言ったのに!」

 部室でそんなことをしていたら台無しも台無し、即廃部だよ!


「ね、ねえあんごくん。どうして雑草は抜いちゃうの? 雑草だって生きているのに」

「まだその話をしてるのかジュリアは。さっきも言っただろ、仕方ないことだって。別に根絶やしにするわけじゃないんだから、これは住み分けだ」

「そ、そうだけど。でも、雑草かわいそう……」

「お前もちょっと黙ろうか?」

 リズミカルに駄洒落を言いやがって……。


「草を引き抜いていて思ったのですがあんごさん。今回の件から心機一転、新たな部員をセ・リーグがパ・リーグから引き抜いてくるというのはどうでしょう」

「いやアネモネ。新たな部員を入れるっていうのは別にいいけど、どうしてプロ野球選手限定なんだ?」

「なぜって、『ノープロ部』は『ノーヒットノーランを達成したプロ野球選手の集う部やねん』の略なのですから。当然では?」

「だからやねんって、そんなものの略ではありません。俺らの中に一人でもそんな経歴の持ち主がいるか?」

「言われてみればいませんわね。『脳ひっど……』や『脳ガーン……』ならたくさん集っていますけれど」

 たくさんと言うか、それは最早全員なのでは……?


「なああんご、そのバケツに入ってる草はどうすんだ? 食べんのか?」

「ハッピー。いくらお前が食いしん坊だからって雑草を食べるのはやめろ?」

「でも草って食べられるんだろ?」

「七草のことか? えっと、せり、なずな、ごぎょう、はこべら、ほとけのざ、すずな、すずしろ。だよな」

「そうだったか? エビ、うずら、ごぼう、はんぺん、ホットケーキ、うずら、たん塩。だったと思うけど」

「それは確実に違う!」

 まずどれも草ではないし! うずら二回登場してるし!


「しかしあんご様よ、この草は本当にどうしてしまうつもりだ?」

「志藤先生が邪魔にならないところにでもまとめて捨てておいてくれって言ってたって、キュートが俺に教えてくれたんだろ? だからそうするつもりだけど。と言うか早くそうして部室に行こうって」

「待て待てそれはもったいない。『草でも鯛』ということわざがあるだろう?」

「それは『腐っても鯛』じゃないか?」

「違う。『草でも鯛だ』。つまりバケツの中のこれは、草だが、でも、鯛なのだ」

「草だよ!」

 鯛は腐っても鯛かもしれないけど、草はどうなろうが草だよ!


「って、お前らがバカなこと言ってるうちに部活開始の時間になちゃったじゃないか!」

 まったく……先が思いやられしかしない。

 本当に部を続けるという選択は正しかったのだろうか。

 とは言えこれは誰に強制されたわけでもなく自分自身で選択したことだ。

 ならばこれで正解じゃなくとも、間違いでもまたないのだろうけど。

 まあそう思えるうちは、この亜人娘達と問題に立ち向かってみるのも悪くないか。



 校舎にチャイムの音が響き渡る。

 今日も今日とて、ノープロ部の活動の始まりだ。

ここまで読んでいただき本当にありがとうございました。

またどこかで拙作を見かける機会がございましたら、そのときはぜひ目を通していただければと思います。

よろしくお願いします。

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