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モンスター娘@問題があーる!  作者: 高辺 ヒロ
7.ノープロ部
33/35

7-3

今日も読んでいただきありがとうございました。

「ではわたくしから一つ」

 ネゴシエーターを雇う。

 アネモネから出てきたのは、そんな、至極普通な意見だった。


「わたくしの父が社長を務める会社にも、専属のネゴシエーターがおります。その伝手を使い優秀な交渉人を雇い、廃部をなしにしてもらえるよう、校長に交渉してもらうのです」

「交渉ねえ……」

「あるいは、校長にこちょこちょしてもらうのです」

 いや、そのあるいははいらないけども。


「我々素人がするよりも、プロに任せた方が迅速かつ確実にことが終息しますわ」

「確かにそうだとは俺も思うけど。でも校長はさ、『部員皆で話し合って考えてきなさい』って言ったんだよ。だから第三者による介入をよしとするかな」

 第三者と言っても、自分達の担任や親に相談するくらいなら構わないだろうけど、さすがにプロを雇うのはやり過ぎな気がする。


「それに雇うって簡単に言うけど、当然お金はかかるよな?」

「そうですわね。着手金や成功報酬、その他雑費は払う必要がありますけど。まあその点についてはご安心を。わたくしが助っ人マネーから出しますので」

「ポケットマネーじゃないのかよ」

 助っ人マネーって、それただの他人の金じゃないか。


「んーでもやっぱりお金がかかる案はなぁ……」

 それも一般的な学生のお小遣いを寄せ集めた程度じゃ到底まかなえないようなレベルのお金がかかるような案には、やはり頷けない。


「もう少し高校生の等身大の案はないか?」

「では、ネゴシエーターではなくゴネシエーターを雇えばいいんですの」

「ゴネシエーター? 何だそれ」

 ネゴシエーターなら知っているが、ゴネシエーターなんて言葉は初めて聞いた。


「ゴネることを専門とする職業ですわ」

「そんな性質の悪い職業があるのか」

「あると言うか、なるんですの」

 ん? なるってどういうことだ?

 首を傾げる俺を見て取って、アネモネは説明を付け足す。


「雇うと言いましたが、あんごさんがゴネシエーターになるんですの。具体的には校長室の前へ行き『あんごくんぶかちゅしゅるの~』とか『はいぶにちたらいやいやの~』とか、とにかくゴネまくるのです」

「そんなことできるか! 高校生の等身大って言っただろう?」

 それは未就学児の等身大じゃないか!


「高校生の等身大ですわよ。高校生のあんごさんが、床に仰向け等で寝転がり身を大の字にして手足をバタつかせる。略して高校生の等身大」

「確かにゴネる時にとる体勢はそうだろうけど……」

 等身大とは決してそんな言葉の略ではない。


「校長と関係を持つ件に関してもそうだがな、俺はそんなプライドを投げ捨てるようなことは絶対やらないぞ」

「まあそうですわね、いきなりやれと言われても難しいでしょう。ですのでゴネシエーターの本場に出向き、お勉強なさってきてはいかがでしょう」

「本場?」

「主にスーパーのお菓子売り場やおもちゃ屋さんですわね。きっとよい師がおりますわ」

「いないよ、絶対行かないよ!」

 そこにいるのは『師』ではなく、ただの『子』だよ! 駄々っ子だよ!


「えらくゴネますわねあんごさん。もしかしてゴネシエーターの才能がおありなんでは?」

 そんな才能を見出されても一切嬉しくない……。


「ちなみにわたくしは、コネシエーターの才能を持っていますの」

「才能って言うか、ただのコネだろ」

 いや、ただならぬコネと言った方が正しいのだろうけど。


「それで、そのコネシエーターのアネモネさんは、他に案はあるのか?」

「いいえ、コネっぽっちもありませんの」

 コネぽっちもって……。


「じゃあ俺を省くと残りはキュートだけだけど」

 彼女は依然として思案中の様子。

 その証拠に下半身から伸びる触手がひっきりなしにうねっている。

 だが時間は無限ではない。時計の針はもうすぐ部活終了の時刻を指してしまう。


「なあキュート、そろそろ何か案は浮かんできそうにないか?」

 俺は仕方なく彼女を無理矢理話の中に引っ張り込んだ。

 すると触手の動きは止まり、彼女は目を開ける。


「愚問だなあんごさま。案など我が生まれる前から既に思い浮かんでいる」

「そりゃキュートの案はいつも、先人の残したことわざや至言からの引用だからな……」

 いや、間違い勘違いだらけでまったく引用はできていないが……それはいいとして。


「思い浮かんでいるならすぐに発表してくれよ」

「それがだな、少々他の者の案に似てしまってな。どうしたものかと迷っていたのだ」

 それをずっと考えていたのか。紛らわしい。


「まあいいよそれでも、一応発表してみてくれ。ちなみに誰の案と似てしまったんだ?」

 誰の案と似ようが酷いことは確定だが、せめてセレナの案以外の案であって欲し――


「セレナの案だ」

「…………」

「我もセレナと同じく、あんごさまが校長と関係を持つべきだと思うのだ」

「言っただろ、絶対嫌だって」

 と言うかお前までそんな話をしだしたら目も当てられなくなるからやめてくれよ……。


「しかしだな、先人も言っているではないか」

「先人はそんなこと言ってないと思うけど?」

「いいや言っている。『オケツに入らずんば虎子を得ず』と」

「オケツじゃなくて虎穴!」

 よくあるやつだよ! よくやるやつだよ!


「あんごさまが校長のケツに入れれば、きっとことはうまく進む」

「進まないし、たとえ進むとしても絶対その案は通さない」

「強情だな。こんなときくらい部長として部員のために身を挺しても罰は当たらんぞ。だからあんごさま――」

 キュートは珍しく片手でグッドサインを作ると、言った。


「ズンバ!」

「ガンバ! みたいに言うんじゃねえよ!」

「あんごさま、そうイラずんばイラずんばするな」

「イライラしてるの!」

 イラずんばイラずんばって何!?


「お前ら揃いも揃って全員でふざけやがって」

「ふざけたのではないぞあんごさま、我らは皆おどけたのだ」

「おどけてるような状況か今は!?」

「はてさてどうだったかな」

「とぼけるのもやめろ!」

 一体どう収拾をつけろというんだこれは。

 結局いい案どころか、まともな案すら一つも出ていないじゃないか。

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