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モンスター娘@問題があーる!  作者: 高辺 ヒロ
4.スフィンクス
20/35

4-幕間

 果たして『バナナで口を塞ぐ』などという案を出した結果、スフィンクスの生徒達がどうなったかと言うと――。


 スフィンクスからの相談に返信のメールを送ってから数日後の午後。

 今週はテストがあり全部活活動停止ということで、授業が終わり早々に帰宅しようとしていたのだが、厄介なことに、下駄箱で靴を穿き替えたところでセレナとバッタリ鉢合わせてしまった。

 まるで水中を泳ぐかのようにその細い体と長髪を宙にたなびかせ移動していた彼女は、目が合うなりにやっと口角を上げる。


「あ、あんごパイパイじゃないですか」

「誰があんごパイパイだ、俺は男だ。そんなものは付いてない」

「そうでしたそうでした、あんごチンパイでした」

「もう性別が混ぜこぜだぞそれ」

「つまりふたなりって奴ですね」

「セレナ、こんなところでそんなことを言うのはやめろ?」

 現在下校のピーク時、辺りにはたくさんの生徒がいる。

 まあこんなところでなくとも、そんなことを言うのはやめて欲しいが。


「分かりました。にしてもあんご先輩、ふたなりってお侍さん使いそうな言葉ですよね」

「そうか?」

「拙者、ふたなり」

「セレナ! やめろって言ってるだろ!」

 分かった分かったと口ばかり、何も分かってないじゃないか。


「ですが先輩、いつも言ってるでしょう? これがセイレーンの性質なんですって」

「そうかもしれないけどさ……他の生徒に聞かれて変な噂が立ったらどうするつもりだ」

 しかしそんな俺の心配はどうやら杞憂だったようだ。

 幸いなことに、近くにいた集団が大声で騒いでおり、その声によって俺達の会話は周りの生徒には届いていない様子。

 にしてもあの集団は何をしているのだろう。

 五、六名の男女の生徒が女生徒を一人囲み、そしてその女生徒に向かってバナナを突き付けていて、雰囲気的に何かの遊びなのだろうけどとりあえずシュールだ。


「あれは『スムゲーム』ですね」

 セレナが俺と同く騒ぐ集団を見つめてそう呟いた。


「『スムゲーム』? 何だそれ」

「『スフィンクスが問題を出しそうになったら口にバナナを突っ込むゲーム』の略です」

 濃縮だな……。


「確か先輩の学年にはスフィンクスの生徒はいらっしゃいませんでしたよね?」

 首肯すると、なら知らないのも仕方がないかもしれませんねと彼女。


「あのゲーム大流行してるんですよ。内容はそのまま、問題を出しそうになったスフィンクスの口に誰が一番早くバナナを突っ込むことができるか、を競うゲームです」

 セレナによると、必ず問題を出しそうになったときにバナナを突っ込むこと。

 お手つきをした場合、した者がバナナを一本食べないといけない。

 何度か繰り返し最終的に一番多く突っ込めた人の勝ち。

 というシンプルなルールのゲームのようだった。


「正直全然面白そうじゃないな」

「でもあんなゲームを生み出した原因は、わたしたちノープロ部にあるんですよ?」

「だろうな。囲まれてる女生徒がスフィンクスの亜人だと気付いて、そうなんじゃないかと思ってたところだ」

 察するに、スフィンクスの生徒は、問題を出しそうになったら自分で自分の口にバナナを突っ込むことを選択した。

 その姿を見た友人が面白がって、最後にはゲームにまで発展したのだろう。


「と言うか大流行してるってことは、あの集団以外にも同じような集まりが?」

「たくさんありますよ。スフィンクスいるところにスムゲームありです」

「へえ……そう」

 端から見てるととんでもなくくだらなさそうなんだけど。

 まあだからこそ、スフィンクス達は大丈夫だと言えよう。

 彼女らは友達がいなくなってしまうかもしれないと心配していたようだが、こんなくだらないゲームで一緒に笑い騒ぐことのできる仲間が周りにいるのだ。

 きっとそのゲームのブームが去ってしまっても一人になることはあるまい。


「先輩も混ざってきたらどうですか? 合法的に女の子の穴に突っ込めますよ?」

「いちいちいやらしい言い方をするな。俺は遠慮するよ」

 何度見ても全く面白そうじゃないし、試しに一度という気にすらならない。


「何でですか。もしや、既に目の前に合法的に突っ込める女の子がいるからですか?」

「お前はそういうことを言うなと何度言えばわかるんだ!? 分かった。そんなに突っ込んで欲しいなら今から家に来い! お前がもう嫌だやめてって泣いて懇願するほど突っ込みまくってやるから!」

 もちろんバナナを。

 そして自身の言葉を反省しろ。


「あの、先輩……こういうところであんまりそういう発言はしない方がいいですよ?」

 ほら、と俺の背中側に視線を向けるセレナ。

 何かと振り向いてみれば、そこには顔を引きつらせたクラスメイトの女子が数名。


「あ、いや、今のはその……あの」

 さんざんセレナに注意をしておきながら不用意な発言をしてしまった俺は、次の日からしばらくの間、クラス中の女子から白い目で見られることとなったのだった。

今日も読んでいただき、ありがとうございました!

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