盗賊殺しの神殿騎士2
「戻ったぞ」
近隣の町に戻った神殿騎士は真っ先に商館を目指し、背筋を伸ばした商人に声を掛けた。
頷いた商人の目線は馬に載せた女二人に注がれていたが、表情は動かない。数瞬の後に興味を失ったかのように、神殿騎士に目線を戻す。
「首尾は如何でしたか?」
「生存者二名、残りは俺が殺した。……死なば仏らしいから、皆弔ってやれ。駄賃は盗賊共のねぐらに置いてある」
「了解致しました。気前良くて助かります」
心からそう思っているのか、あるいはリップサービスなのか、丁寧にお辞儀する商人の真意は掴めない。しかし、これまでの付き合いから丁寧な仕事をする商人を神殿騎士は好意的に捉えていた。
「それと、この二人に当面の寝床と仕事……ああ、その前に風呂を与えてくれ。当人に拒絶されたら好きにさせろ」
「はっ」
商人が随伴の人間に目配せすると、白く、もこもことした大きいタオルを取り出し女達に被せていく。女達はされるがままだったが、やがて堪え切れずに嗚咽を吐き出していった。
ようやく緊張の糸が切れたのだろう。助かったという事実が実感として感じた途端、感情の波が襲いかかったのだ。
神殿騎士はそんな二人を一瞥すると、背を向けて歩き出した。
「……まだまだ、貧しい」
この国は貧しい。盗賊や山賊などに身を落とすことを躊躇いなく選んでしまう人間が居る事が何よりの証明だ。
食うのに困るから、自分が動いて飢えを凌ぐ他に手段を見つけらない。誰かに護られなかったから、誰かを思いやることなど想像も出来ない。
だから他人のモノを盗むことに正当性を見出す。そのように生きていき、ただ奪うことの先の無さに目もくれず、手を血に染め、誰かを傷付けることに愉悦と優越を覚えるようになれば後戻り出来なくなる。
そんな風に生きなくても良いと、他に手段があったと識っていたなら。今日、命を刈り取った者達は今も笑っていたのだろうか。
自分勝手な考えだと知りながら、自分も己の正義に酔い掛けていると知りながら、そう問わずには居られない。
でも、その答えは誰も神殿騎士に与えてくれない。
多くを教えてくれた王様は、疾うの昔に天珠を全うして墓の下。
彼等は今日も天に縋ることは許されず、ただ、己の正しさを己に問い続ける。




