02 音と匂いの扉
今日は木祖のお兄さんの話です。
―――今日は早く起きてしまった。なぜだろう。
布団から出る気もなれず、スマートフォンをいじる。
こういう時に取り出すのは大抵ツイッターだ。手軽に楽しめるのが魅力だと思っているが、実際どうなんだろう。
スマートフォン独特の指の動きをすると画面は下にスクロールされる。
その内容は投稿者その人の愚痴、友達とのくだらない会話、笑わせにきている画像、色々な公式アカウントなど、多岐にわたる。
「ハハッ、おもしろいな。」
こんな感じの悪ふざけが嫌いな男子高校生はいないだろう。
俺は軽くほほえみながら画面をスクロールさせると、ある記事に目が吸い寄せられた。その記事の題名は、
『あなたも気を付けたほうがいいかも?都市伝説特集~!』
などという陳腐なゴシップのような何かだった。
「こうゆーの、なんていうのかなぁ…」
アクセスとかが欲しいのはわかるが、こんなものを書いていったいなんの気持ちが満たされるのだろうか。
普段は何も考えずそのままゴシップ記事から目をそらす彼だが、たまたま今回は、それを見てみるのも悪くないかもな…と思い、記事を開いた。
「あっ…!」
そして俺はミスをしたのに気づいた。こういう記事は大抵インターネットにつながるのだ。そして今回線をWIFIにするのを忘れていた。しかも今は月が終わろうとしている。つまり、
「通信制限かぁぁぁぁあぁ~」
俺は枕に顔をうずめながら言った。通信制限になるとWIFIでないと通信がものすごく重くなるのだ。
「ああ!もう!」
俺は壁に向かって携帯を投げるように置き、寝ようとした。
「*@**!*」
ん?なんだこの音。妙にでかいなー。
「*+!+‘+‘!>@<?+*!_}|++++@@@」
……なんか女の声が聞こえる。隣は木祖の部屋だし、あいつが女連れ込んでるとかは無いよなぁ。
言語に聞こえなくもないが、それにしては言葉が不規則だ。ナンダコレ
「*‘{+=~!!」
その瞬間、部屋がイカ臭さで満たされた。
「うっ!」
あれをしているにはこれは臭すぎる。そのにおいに耐えること数分、さっきまでなにもなかったかように、匂いはスーッと消えた。
「おーい木祖、どーなってん…」
扉を開けて、硬直した。
そこには、美少女が一人で寝ていた。
ちなみにこのお兄さん、彼女持ちです。しかも今別れようとしています。兄さん側から。非リアの敵です。