グレッグ・サンダーバードの闇
008
黄色のフードと目に十字架のマークは「NEWWORLD」のシンボル。
目に十字架が描かれた教団のシンボルを背中に背負った、
ダークソウルズが私達に襲いかかってくる。
ざっと見て百体は越えている。
ふん。楽勝ね。
まぁ見てなさい。
早速十体位のダークソウルズに囲まれる。
「ブラスト!!」
小爆発が私の周りに発生して、
ダークソウルズの足を吹き飛ばした。
そのまま私は怨月を鞘から抜き、一回転して周囲のダークソウルズを両断した。
僕はグロッグ17カスタムを、一体一体「核」を狙って射撃していく。
楓さんの処刑スタイルに比べては地味だが、
僕もダークソウルズとの闘いには慣れてきたものだ。
まぁそういう時には油断するもの。
後ろからダッシュしてきたダークソウルズに腹を刃物で突き刺された。
「うぐ!!」
少し痛いけど大丈夫。
魔法「プロテクト」をかけているから多少の攻撃位では僕は死なない。刺さらない。
肉体を硬質化させる魔法。
まぁ痛いけど・・・・・・
ちなみに効果時間は十分だ。
バン!!
僕に刃物を刺して来たダークソウルズに弾丸を与える。
剣に比べて銃は弾丸という撃てる数がというデメリットもある。
が最下級スペル「リローダー」があるので
僕の銃、いや銃を使う処刑人に弾切れの心配はない。
「リローダー」は瞬時に銃の弾丸を補充する魔法。
ちゃんと家とかに予備の弾薬があることが条件なんですけどね。
結局お金はかかります。
25発撃ったらすぐに僕は「リローダー」を唱えた。
「楓さん。一直線です。お願いします」
「わかっているわよ。「ソードドライブ!!」」
「ソードドライブ」刀の威力を急上昇させる魔法。
刀を使う処刑人の必須魔法の一つ。
効果時間は五分。
まとまって一直線に襲って来ているダークソウルズに私は、
正面から走って突っ込んで全体をバラバラにした。
相変わらずソードドライブの威力は凄まじいわ
ダークソウルズの身体がバラバラの肉塊となって宙を舞う。
その汚れた血を怨月は吸収する。
斬れば斬るほど切れ味が増す私の愛刀・怨月に、
この数は最高だったわ。
斬撃と射撃。
血の雨が降り注ぐ。
ダークソウルズは皆、塵や肉片と化した。
いったん僕達は休憩をとることができた。
まぁ殆ど楓さんのおかげで殲滅できたものだが。
「まだまだダークソウルズはいますよ。進みましょう」
「バイクで突っ切ったほうが早いんじゃないの?」
「今回はターゲットの位置が不明ですからね、
ダークソウルが高くなっている場所を探しましょう
あと広い屋敷ですけど、バイクだとガンガンと
しょっちゅう扉とかにぶつかりますからね」
「りょーかーい」
楓さんはダルそうに言った。
「だり~」
だり~って言ったよ!!!この子。
「QA」で僕は屋敷の全体図を確認する。
今いる玄関ホールからダークソウルが最も高くなっているポイントを探す。
その間の戦闘は全て、楓さん頼りだ。
楓さんに斬って斬って斬りまくってもらった。
「正一。まだ解析は終わらないの?おりゃ☆」
「もうちょっと時間を下さい。うわっ」
ダークソウルズの腕が飛んで来た。
手に持つ凶器が僕の鼻先を掠める。
「検索中は私が戦ってあげるけど、あんたも早く戦闘に加わりなさい、よ!」
と正面のダークソウルズの手に持つ盾ごと頭部を一閃する。
ダークソウルズの「シールドタイプ」もいる。
ダークソウルズの種類・形態が多ければ多いほど、
主の心は闇に溶け込まれている証拠だ。
グレッグ・サンダーバードはやはり酷くダークソウル化が進んでいる。
「解析完了です。サンダーバードは近くにいます。2階の大広間です」
「早く行こ☆」
「了解です」
僕は「QA」をポケットにしまい。楓さんと2階の大広間を目指す。
シールドタイプや空を飛ぶジェットタイプのダークソウルズの群れがいたが、
楓さんの敵ではない。
皆殺しだ。
人間離れした跳躍力で空を舞い、怨月でバラバラの肉片にする。
長い廊下を渡り、目的地に到着した。
この扉の前にグレッグ・サンダーバードはいる。
楓さんは扉を蹴破った。
「ようこそ侵入者のお二人~方。丁度『礼拝』のお時間で~す。
私の神のお歌をお聴きなさ~い♪」
二階の大広間には、黄色のフードを被った信者達が皆一様に空に祈りを捧げていた。
その上空にグレッグ・サンダーバードは宙に浮かんでいた。
背中に巨大な銀の十字架を背負った黒人で、
牧師風の格好をしている。あ、牧師か。
「斑鳩・B・楓。キラーネームKILLBLOODあんたを処刑しにきたわよ」
「須藤正一。見参!!」
フロア内が騒然となる。
「KILLBLOOD~♪。神への冒涜者~。処~刑人~。愚かな生き物ですね~♪
皆様~。殺して差し上げて下さいませ~♪」
グレッグ・サンダーバードは高音の声を発した。
その声からは不の感情が溢れて聞こえた。
その声を聞いた瞬間。フロアの信者達は皆うつむく。
そして、フードのポケットから拳銃を取り出し、
僕達に向けてきた。
感情のない殺意をこめて。
楓さんの反応速度は流石だった。
「正一。早く私の後ろに。「プロテクト」もかけなさいよ」
僕は急いで楓さんの後ろに隠れた。
そして「プロテクト」を二人にかけた。
バンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン
激しい銃撃がこちらに向けて止むことなく発射される。
キンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキン
楓さんは怨月を振り回し弾丸を弾き続ける。
「キリがないわね。いっそ弾丸弾き返す?」
「楓さん。この人達はたぶん洗脳されているだけです」
「だからといっても、弾き続けるのにも限度はあるわ」
「もう少し時間を下さい。ある魔法を試します」
「わかったわよ」
僕は初めて使う魔法の詠唱を始める。
魔導解説書で読んだだけの上級魔法だからうまくいくかわからないけど、
いや、必ず成功させてみせる。
「ショックボルト!!」
僕の右腕から出た光の玉はゆっくりと宙を漂い、
フードを被った信者達の群れの中心に落ちた。
僕が遠隔操作をしているのだが。
落ちると同時に激しい発光と共に稲妻がフロア一面を走った。
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」
フードを被った信者達は痺れ全員床に倒れた。
「やった!!」
「やるじゃない。正一」
「―っう!!」
右腕に激痛がはしった。
「正一!?」
右腕に薄らとワイヤーが何重にも巻かれる幻覚(?)が見えた。
いや幻覚ではない。魔法を酷使しすぎた罰。
ダークソウルを発動の元として行う禁忌の術、魔法。
それが代償として現れたのだ。
これが人の心が闇に落ちる前の現象か。
「・・・・・・楓さん。大丈夫です」
「でもその汗やばくない?」
「ちょっとだけ無理しただけですから」
僕は激痛が収まらない右腕を押さえながら立ち上がった。
まだ処刑対象は残っている。
グレッグ・サンダーバード。
僕達が信者達を気絶させる時も、上空で僕達をずっと見つめていた。
「ほう。KILLBLOODだけではなく。その助手もなかなかやりますね~♪」
グレッグ・サンダーバードが上から降りて来た。
「ここで殺りあうつもり?」
楓さんは怨月の切っ先をグレッグ・サンダーバードに向ける。
「奥の礼拝堂で殺り合いましょ~う♪」
グレッグ・サンダーバードはゆっくりと歩みを始める。
奥の扉が何重にも自動で開かれる。
それを追うように僕達はゆっくりと後をついていく。
礼拝堂に続く道の壁にはグレッグ・サンダーバードの抱える闇が垣間見えた。
大量の武器、銃器、果てはロケットランチャーも展示されてある。
武器倉庫。武器製造工場。
黒い噂は本当だった。
裏でマフィアと繋がっているというマスコミの報道も嘘ではなかったらしい。
そんな黒い噂の部屋を何重も通り過ぎ、
ひときわ大きな扉が開き、
礼拝堂と呼ばれる部屋についた。
礼拝堂と呼ばれる部屋は、真っ白な大理石でフロア一面が覆われており
一枚の巨大な肖像画、いや写真が飾ってある。
質素な部屋だった。
「ここは、私だけの聖域。さぁ殺り合いましょうKILLBLOOD~♪」
その台詞と共にグレッグ・サンダーバードの背負っている巨大な十字架は、
何度も何度も変形を繰り返し、
グレッグ・サンダーバードの全身を包み込む銀の鎧と化した。
「正一。下がってなさい」
僕は部屋の隅へと走っていった。
右腕の痛みはまだ収まらない。
ダークソウルを酷使した罰。
ここから語り手は私に変わる。
いつもの決め台詞で死闘は始まる。
「依頼は確実に迅速に遂行がモットー。KILLBLOOD あなたのお命頂きます☆」
私は怨月を上段に構えた。