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KILL BLOOD  作者: ユート・ロビンソン
依頼No.50 洗脳
6/35

神谷処刑事務所にて

006


「両親が悪徳宗教にはまってしまい、困っているんです」


品の高そうな女性が僕にそう語りかけてきた。

ここは神谷処刑事務所。

日本で唯一の処刑専門の事務所。

午前十時。開店時間は午前九時。閉店時間は明朝四時。


この女性も訳ありの依頼者なんだろう。

目から力強い怒りのような感情を感じる。


依頼者の名前は杉野鏡花すぎのきょうかさん。二十二歳。

白いワンピースに透き通った白い肌。

あからさまに高級そうなバッグを身に着けて。

均整のとれたボディをしている。

・・・・・・美しい。


いやいや依頼人の紹介をせねば。

美女を見るとすぐ品定めをしてしまう。僕の悪い癖。


世界最大の化粧品メーカー「杉野グループ」のご令嬢だ。


「どういったご依頼でしょうか?」

まぁ処刑に決まっているが、いつものやりとりだから。ご愛嬌で。

「この男を処刑して欲しいんです」

一枚の写真がテーブルに置かれる。

僕は手に取って確認した。

「これは・・・・・・あの、グレッグ・サンダーバードですね」

「ええ。その通りです」


グレッグ・サンダーバード 三十歳。アメリカ人。黒人。

宗教団体「NEWWORLD」の教祖。歌手でもある。

世界各国に教団支部を持ち、

歌で教訓を世界に広め団体規模をどんどん拡大している。

だがその発展の裏では黒い噂が後を絶たないらしい。

まぁ僕も音楽ディスクを買って持っているが・・・・・・

彼の歌からは何も感じなかった。

世界宗教安全促進曲。なんじゃそりゃ。って感じだ。


「彼がどのようなことをしたのでしょうか?」

僕は鏡花さんに話を聞く。

「あいつは両親を歌で洗脳したんです。私の実家に突然現れて、

歌を歌いだしたのです。すると両親が自社の株の100%を

あいつに近日中にやるという約束をしたんです。

書類も作らされました。

明らかに人間の仕業ではないと思うんです。

あまりにも早すぎます。おかしいと思いませんか?

私もその場にいましたが、あいつの歌からは悪意しか感じられませんでした」

「・・・・・・悪意ですか」

僕はその言葉に反応する。

「お願いします。あいつを殺して、両親の目を覚まして欲しいんです」

鏡花さんが立ち上がる。

彼女の目は涙目だ。

「そのご依頼お受け致しましょう」

僕の横に座っている、魔夜さんが言った。

ここは僕の台詞としたかったのだが・・・・・・黙っておこう。

「その代り、有名人の処刑となりますので、処刑費用はかなり高くつきますが」

「構いません。両親と杉野グループを救えるのであれば」

「ではこの契約書をよく読んでサインを」

魔夜さんが契約書を持って奥の部屋からやって来た。


鏡花さんはためらうこともなく、

契約書に己の名前を刻んだ。

高額の処刑費用を提示されるというのに

その意志はそうとうに強いようだ。

筆跡もあつい。


「では今晩八時に二人の処刑人を彼の元に派遣します。よろしいですか」

「よろしくお願いします」

鏡花さんは深々と頭を下げ、

麦わら帽子を被り事務所を後にした。


何故社長ではなく、僕と魔夜さんが依頼人の対応をしていたかと聞かれれば、

社長は事務所の自分の部屋で睡眠中。朝は弱いらしい。

楓さんは学校。

ということで事務所の管理番を任されている僕達が対応することになった。


「須藤さん。処刑道具と『アメリカ大陸』までの移動準備お願いしますね」

「了解しました。魔夜さん。アレを用意しますね」


僕はNEO東京からアメリカ大陸までの最短ルートを調べ、

グロッグ17カスタムをチューンナップし、

楓さんにメールを送った。

今回の依頼は大変そうだ。

世界的な有名人を『処刑』するのだから。


ピロリ~ピロリ~♪

私の携帯にメールが届いた。

私は昼休み中、楽しい楽しいお弁当タイムだっての。空気読めっての。

携帯を起動しメールを開く。

正一の顔が浮かびあがった。

ホログラムメール。


「楓さん。依頼です。今回のターゲットは世界の有名人、

グレッグ・サンダーバードです。僕は『マッハバイク』の準備をしときますので、

帰り次第、現場、アメリカ大陸に赴きましょう。以上です」

そっとメールアプリを閉じた。


「ねぇ楓ちゃん。今の誰?誰?彼氏?」

クラスメイトの智子ちゃんが話かけてくる。

「違うよ。ただの仕事のパートナー。彼氏なんてほど遠い男よ」

「ふ~ん。イケメンだったのにね」

「そうかな~?イケメンかな~。そう思ったこと一度もないわ」

正一はただのドスケベの童貞男、

彼氏に例えられるなんて心外だわ。

がらにもなく毒を吐いてしまう私。

こんな私珍しいかも?


私は授業と部活(剣道)をすまして、事務所に帰った。

久しぶりの大物の処刑依頼の予感。

ワクワクするわ。

私は怨月を左手で振り回しながら、事務所の扉を開ける。

私は学校にも怨月を帯刀している。

いつ何時でも処刑ができるように。

Sランク処刑人だもの。銃刀法は無視されるのよ。

ここだけの話ね。


「お帰りなさい。楓さん」

「だだいま。魔夜、社長」

眠そうに社長が椅子から起き上がる。

「私も今起きたところだよ」

社長は本当に『太陽が昇っている間は弱いな~』と思った。

「あれ?正一は?」

「須藤くんは外で『マッハバイク』のメンテナンスをやっているよ」

「やっぱあいつ存在感薄いから、気づかなかったわ」

「ハハハ。酷いことを言ってやるな」

「うんじゃ。準備してきまーす」


私は自分の部屋に上がって、

白いセーラー服を、処刑の制服、黒いセーラー服に着替えた。

髪型もポニーテールでバッチリ決めて、

怨月をくるりと宙に回転させてスカートの刀差しに差す。

処刑準備完了。


「じゃあ行ってくるね~☆」

「いってらっしゃい。楓さん」


私は事務所を後にした。

ちょっとした旅行の気分で。

アメリカ大陸までレッツゴーよ☆

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