斑鳩・B・楓その2、その3
003
チーン「二十五階デス」
エレベーターのドアが開く。
エレベーターの前の通路には、
己の存在を生み出した、主を守るように。
五体のダークソウルズが各々のポーズで凶器を持ち待ち構えていた。
「グルルルルルル」
獲物を発見したダークソウルズは戦闘体勢に入る。
「正一。下がっていて」
「後ろは壁です」
「いちいち揚げ足を取るなー!!」
楓さんは怒り心頭だ。
「大体、正一は、ねー」
「いや、楓さん!前、前!!」
ダークソウルズがいつまでも待っているわけもなく、
それぞれの凶器を手に襲いかかってきていた。
「Eランクのくせに」
まず一体目のダークソウルズは真横に両断
「Sランクの」
二体目は首を刎ねて
「私に」
三体目は足を斬り飛ばしてから、胴体に深く刃を突き入れ
「逆らうなんて」
四体目は乱れ斬り、粉々の肉片にして
「十年早いのよ!!」
五体目は背中を向けて、下から上に斬り、刀を鞘にしまう。
楓さんは僕に顔を向けたまま、
鮮やかに、いや芸術的にダークソウルズを処刑した。
パチパチパチパチパチ
「お見事な処刑手際です」
僕はその鮮やかな処刑に拍手を送った。
「ニヒヒ。楽勝よ♡」
楓さんもニンマリ笑顔で満足そうだ。
斬られたダークソウルズの内、何体かまだ『核』を破壊できない奴がいたので、
僕は愛銃・グロック17カスタムの銃撃で『核』を破壊した。
「ターゲットの反応はこの扉の奥からです」
僕は「QA」で位置を確認した。
ターゲット『天使』は一切動いていないようだった。
あれだけ上の階で暴れたというのに、
主の余裕というやつであろうか。
どちらにせよ凶悪犯罪者の考えはわからない・・・・・・
「何一人で悦に入っているのよ!!!」
バシィ!!
楓さんに尻に蹴りを入れられた。
「イタタ―では参りましょうか、今ロックを解除します」
「ロック解除?深く考えることなんてないわ、こう」
楓さんは片足を後ろに下げて。
「蹴り飛ばせばいいのよ」
レストランの分厚い扉を蹴り破った。
なんちゅう破壊力だよ!!!!
僕がロックを外そうと思っていたのに。
僕の数少ない見せ場を取らないで下さーい!!!!!!!
ガランガランガラン
分厚いレストランの扉は斜め上に吹き飛んで行った。
今回のターゲット『天使』はバイキングレストランがあったであろう、
フロアの真ん中に立っていた。
元々そこにいたかのように。
周りにあった機材や椅子・テーブルは全て粉々に破壊されており、
さながら決戦の地を自分で用意したかのようにも思えた。
「・・・・・・遅かったな」
黒いスーツの『天使』は振り返る。
中々の渋い声だ。
目の周りにはワイヤーが張り巡らされており、
ダークソウル化が進んでいた。
写真の通りだ。
「斑鳩・B・楓、キラーネームKILLBLOOD
あなたを直々に処刑しにきたわよ」
「・・・・・・お前がKILLBLOODか、噂は聞いているよ。
近年の犯罪者達は皆、お前に・・・・・・
KILLBLOODに処刑されたとな」
「ええ。皆殺ってきたからね」
「私の命も取りに来たのか?」
「もちろん♡」
バサァ!!!
『天使』が文字通り、大きな二枚の翼を広げた。
「では殺り会おうかKILLBLOOD」
「正一。下がっていて」
僕は言われる前に後ろの壁に下がっていた。
この『天使』の威圧感に負けて己から下がってしまっていた。
このプレッシャーが元・人間に出せるものなのか。
瘴気。狂気。狂喜。
ドス黒い感情が『天使』から放たれていた。
これがダークソウルに堕ちた人間の心か。
今にも吐き出しそうだ。
あ~あ。せっかくの花道なのに
語り手が私に変わるのね。
・・・・・・ゴホン。
それじゃあ、いつもの決め台詞言うわよ。聞きなさい。
耳の穴かっぽじってね。
「依頼は確実に迅速に遂行がモットー。KILLBLOOD あなたのお命頂きます☆」
私は怨月を鞘から抜き、上段の構えをとった。
004
死闘は一瞬で幕を閉じた。
私は構えをとった瞬間に『天使』に高速で接近して
その首を怨月で刎ねた。
首を刎ねれば大体の生き物は死ぬわ。
それが自然の摂理。
まぁ常識よね。
「あらら。ずいぶんと楽な相手だったわね」
首から大量の出血を放出したまま、
突っ立っている『天使』の死体。
これで『依頼』は終了かと思った。
「まだ私は殺れていないよ。KILLBLOOD」
その声に私は振り返る。
首のない『天使』の死体のどこから声がしたかはわからないけど、
すぐにその顔を再び私は見ることになる。
首の付け根から赤いゼリー状のものが伸びて、伸びて、
『天使』の顔を形成し始める。
「想像以上に早いな。KILLBLOOD」
ほんの数秒で『天使』の顔は元に戻った。
「異常な再生能力が武器ってわけ?前もそんな奴と殺りあったわ」
私はまた『天使』に高速で接近して胴体を輪切りに両断した。
『天使』の上半身が後ろに崩れ落ちる。
まただ。『天使』の上半身と下半身から赤いゼリーが伸びて、
二つを一つに繋ぎ合わせた。
不死身性の怪物ね。
繋がった『天使』はこう言った。
「武器というのはこういうものを言うんだよ」
『天使』は右手を前に上げ、「魔法」を詠唱した。
「エクスプロード!!」
私の顔の前の空間が捻じ曲がる。
その瞬間、大爆発が起きた。
ドゴーン!!!!!!!!!!!!!!!!!
「楓さん!!!」
後ろにいる正一が叫んだ。
・・・・・・ほんとうるさいわね。
まぁつまり私は生きている。
当たり前でしょ?あんな「魔法」での奇襲。
今まで潜り抜けて来た死線でもあったものよ。
爆炎の中から私はバックジャンプで飛びだした。
「楓さん大丈夫ですかってブッ!!」
正一がまた鼻血を出した。
さきほどの『魔法』「エクスプロード」の爆発で、
私の着ているセーラー服の上は破け、
中に着けているブラジャーが露出状態になっていた。
これを見ていたのね。
・・・・・・はぁこの男はウブねぇ。
初対面の時も私の下着姿に興奮していた位だもの。
「だからいつまでたっても『童貞』なのよ!!」
「・・・・・・楓さん。それは言わない約束では」
「ほうKILLBLOOD今の「魔法」で死なないとは。やるではないか」
と『天使』は言う。
「あんたもあんなちんけな「魔法」「エクスプロード」で私を殺した気?
笑わせるわね。「エクスプロイドン」位使いなさいよ」
「爆発「魔法」の最上級スペルですね!!」
と正一にツッコまれた。
Eランクのくせに知識だけは一人前なんだから・・・・・・
超ムカつき。
「死ね。KILLBLOOD 「エクスプロード」」
次々と『天使』は私に「エクスプロード」を放ってきた。
油断してない私にそんな「魔法」が当たるはずもなく。
私はその爆撃を躱し続ける。
決して攻撃を諦めたわけじゃないわよ。
ダークソウルに完全に侵された人間には、
魔法の使用回数の『制限』はなくなる。
『こいつの弱点をあいつに調べてもらうために』私は回避に専念している。
私の相棒。知識チートマンに。
「正一!もう解析はできているんでしょ?」
「OKです。『核』は羽の付け根部分です!!!」
「わかってたけどね」
・・・・・・嘘よ。
正一は「QA」で『天使』のデータを探っていた。
この素早い解析のところは褒めてもいいと思うところだわ。
正一の言葉に『天使』は顔を歪める。
弱点を露見された『天使』は「エクスプロード」を放つのを一瞬止めた。
「チャンス!!」
私は『天使』に接近してまず、左の羽を切断した。
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」
『天使』は悲鳴をあげる。
『天使』の羽はもげて地面に落ち、塵となって消滅した。
弱点もーらいっと。
片方の翼を失った『天使』は残りの翼で空に逃げようとする。
「それ位。よんでるわよ!!」
私はレバー下入れの大ジャンプをして、
最後の『核』右の翼を切断した。
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」
『天使』が両羽を失いフロアに落ちる。
グシャ
「まさに堕天使ね」
私は怨月を跪いた『天使』の首筋に当てる。
「ま、待ってくれ。私は地に堕ちた人間達に革命を起こせと」
「言いたいことはそれだけ?」
私は冷たく言い放つ。
犯罪者の言い分なんて聞くだけ無駄。無駄。無駄。
「ま、待て!!」
「これにて終劇♡」
怨月を振りかぶり、
『天使』の首を斬り飛ばした。
ブシャー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
『天使』の首から出る大量の出血がフロア一面を濡らす。
さきほどの比ではない。
私は全身に血を浴びる。
怨月にも大量の血を吸わせてあげた。
「ダークソウル」に侵された汚れた血。
私は雨に、はしゃぐ子供のように、
回る。回る。回る。回る。回る。
僕はそれを見て呟いた。
「・・・・・・美しいな」
と。
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来週は五月八日金曜日午前0時からアップします。