第六話:キャラバン防衛戦(前)
5人の人影を確認し。木の影に隠れる。見た所、追われているのが3人追っているのが2人か。
「…エナ、俺が合図したらこっから飛び出して後ろの二人を後ろから倒せ」
「……分かった」
意図を察してくれたのか、エナは小さく頷いてくれた。
可愛いものだが、今はそれどころではない。
先程の5人を一瞥し、動きを予測する。
「…行くぞ…3…2…1…!」
カウントダウンと同時に、エナが木の影から飛び出す。
どうやらタイミングは良かったらしい。
「…なっ!?」
「……ッ!!」
子供とは思えない敏捷性で2人の男の背後を取った少女は、それぞれの足の腱と太腿を連続して斬った。
驚愕の声を上げて崩れ落ちる者と、無言のまま目を見開きつつ倒れこむ者を確認し、直様後ろを確認する。
そこに少女が追い打ちに柄で背中をどつくと、彼らは静かな人形になった。
「…まだ時間はあるか…?いや先ずは…」
先程追いかけられていた3人の方に目をやると、驚愕と感謝の眼差しで俺達を見ていた。
男2人、女1人…因みに当然年上だ。だが敬語を使う気など全く無い。切羽詰まっているからな。
「…お前達は何だ?」
「…え、えーっと…あのキャラバンを助けてくれる人が居ないか包囲から脱出してきたんですが、追っ手が来てしまいまして…」
「…なるほど、因みにお前らは何が出来る?」
「「「…へ?」」」」
目をパチクリさせる3人の視線に焼かれ、やや苦笑いで応える。
「特技とか、自分の役割とかだ」
「えーっと…俺は冒険者で、弓使います」
「僕は…基本は短剣で、敵の後ろから奇襲するのが…得意と言えば得意です」
「…私は魔導師…と言っても、まだ初等魔導しか使えないけど…」
「…なるほど…。まぁ安心しろ、今からあのキャラバンは助けてやる。お前らも手伝え」
「…えっ?…あ、はい」
現在の状況を確認し、キャラバンの方を見る。こういう状況には少し慣れているのか、盗賊に対して各々武器を向けている。
…なるほど、じゃあ打つ手はあるな。
「…よし、じゃあこれから言う事をよく聞いてくれ。あと、エナもこっちに」
手でエナを招くと、小声で作戦を伝える。
「…それ、成功するの?…下手すれば…」
「絶対に成功『させる』さ、安心しろ」
魔導師の女に対して告げるが、実際成功する保証はない。とは言え、この作戦が成功せねば彼らが助かる事も無いだろう。
「…じゃあ、皆、ハンドサインを使って俺が指揮を出すから配置についてくれ」
「「「「…了解」」」」
4人の声を聞き、一先ず一つ目のステップは終了。
さて、あとは運と俺の能力に賭けるか。