青髪の少女と異世界跳躍
「…なに?この人…」
ワンス南東部、ユラ・エード郊外。
戦地とにほど近いこの位置に、一人の少女が歩いている。
青髪で、外見年齢は12歳程度だろう。その少女が見つめる先には、ボロボロになった青い服を纏った少年が倒れていた。
見た事もない素材だが、隣国のコーズの人間…と言うわけではなさそうだ。この辺りにコーズから来る為には、戦闘地域を抜けてこなければならない。なんの武装も持たない一般人が切り抜けるには流石に無理がある。
「……」
放っておくのが良いだろうが、その場合この人はどうなる?
このまま飢え死に?それとも自分の家に帰る?
「…仕方ない、連れてってあげるかな」
倒れていた人を助けるぐらいなら罰は当たらない筈だ。
「う…ん……ん?」
薄っすらと目に入ったのは、自室の天井に貼って有るポスターでも、今の無駄に明るいLEDでもなかった。
木。木の板で出来た天井だ。それに、壁を見ればランプが吊るしてある。
見慣れない光景に、やや…というかかなり困惑しつつも、記憶を遡る。
PCで異世界戦記をプレイしていて、隣国のユラの部隊を壊滅させた所で一段落付き、イスを引いて立ち上がり、リビングに行こうとした所で、変な円が出現して、光がーーーーーー。
「…ダメだ!訳分からん!」「きゃっ!?」
飛び上がる様に起き上がると同時に、隣から声が聞こえた。
何事かと隣を見るとーーーー
「………へ?」
青い髪が肩まで伸びた可憐な少女が、地面に尻餅を付いていた。
「え…?え…えー…っと?」
そろそろ訳が分からない。というか本当に何があったんだろうか。
場所、時刻、国も不明である。あれか?ウェールズ辺りにでも来てしまったのだろうか?
とりあえず、目の前の少女に色々と聞くことにした。
「えーっと…すいません、大丈夫ですか?」
「………えぇ!?」
状況を理解し、驚愕すべき事実が複数。
目の前の人間が、あれだけボロボロなのにいきなり飛び起きたこと。
そしてそいつが自分と同じ言語を使っていること。
序でに、目の前に手を差し出されたともあって、混乱は境地に達していた。
「…えーっと…あ、ありがとう」
取り合えず手を取って、立ち上がる。
「…で、貴方は…誰?コーズの奴でもなさそうだけ見た事ない服着てるし…」
「え?…コー…ズ?それって、あのユラの隣国の!?」
「え…?う…うん」
驚愕した様子の青年に対して、戸惑いながらも頷く。
急にどうしたのだろうか?
「…マジかよ…ってことは…ーーーー」
「ーーー『あの世界』に来ちゃったの?俺?」
青年は、青ざめた様な、苦笑いの様な、喜ぶ様な、色々な感情が混ざった表情を作り出した。