涙を拭うのは僕の仕事
「ほんとにあいつなんか嫌い。私の事なんてなにもわかっちゃいないのよ」
もっと言ってくれ。
「どうしてあんなのと付き合ってるのかしら。最初から付き合わなきゃ良かった」
そうだ。君にあいつは釣り合わない。
「…でも、結局許しちゃうのよね」
放課後の教室。
僕は幼なじみの彼氏に対する愚痴を延々と聞かされていた。勿論これは今日だけに限ったことではない。よくあることだ。彼女はよく、僕に彼氏の愚痴をもらす。それは僕が、彼女にとって幼なじみ以外の何者でもないならだ。ここで男らしく「そんな奴やめとけよ」とでも言えたなら彼女の心は動くかもしれない。僕の気持ちを伝えることができるかもしれない。しかし僕にそんな行動を起こす勇気はなかった。その前に彼女と彼女の彼の間に入ることもできない。結局、二人は相思相愛だからだ。彼女を傷つけてしまうことが多い彼氏だが、なんだかんだ彼女のことを好いているのが僕にもわかる。彼女も結局はそんな彼氏が好きなのだ。だからこそ、僕が彼女に想いをつげたとしても断られてしまうのは目に見えている。僕は彼らを見守ることしかできない。
ふいに、彼女の瞳から涙がこぼれた。
「何でこんなにあいつのこと好きなのかな。嫌いになれたらいっそ清々しいのに」
ひと粒、ふた粒と、ぽろぽろ涙はこぼれていく。
僕はそっと、無言で彼女の涙をぬぐってやった。
「ありがとう、こんな姿見せられるのはあなただけだわ」
うん、それでもいいんだ。
君の笑顔を独り占め出来るのが彼氏なら、僕は君の涙を独り占めしていつでも拭ってあげるから。君が幸せになるのなら、僕はいつまでもこの想いに蓋をする。
いつの間にか、外は雨が降っていた。
まるで僕の心を表しているかのように。
登録したばかりの初作品です。まだまだ拙い文章ですが成長できるように頑張ります。この作品と後の作品を、比べて成長したなと思える日が来るときまで。