籤引の確立ⅱ
皆本、玖珂、藤川、姫路、麗野、そして平瀬。二班のメンバーである。
「細工しなくともなんとかなったな。ところで姫路、この中にエージェントはいると思うか?」
「可能性は低いですが注意するにこしたことはありません。わたしと皆本さん、平瀬さんをぬいた三人には常に警戒しましょう」
皆本は三人をそれぞれ見た。
玖珂はクラスの中心グループであるサッカー部の連中と仲の良い少年だ。見た目は爽やかでいてスポーツマン的な印象である。背が高く百八十をゆうに超えている。
麗野は黒髪の乙女だ。彼女がクラスに普通に馴染んでいるのには皆本は驚いた。どこか平瀬に雰囲気が似ているからかもしれない。
彼女は無口だけれど学校を休んだクラスメイトにノートを率先して貸すような女の子だった。
彼女はエージェントではないだろう。麗野がもしエージェントだったとしたら皆本は誰も信じられなくなる自信があった。
藤川は・・・・・・。特に印象がなかった。
「なんかすごい失礼なこと言われた気がしたんだけど」
藤川は誰に言うでもなくこぼしていた。
入場ゲートをくぐる。すでに班での行動は始まっている。
「まずは遊園地といえばジェットコースターですよね」
そう言ったのは玖珂だった。
「いいですね」
「行こう行こう」
ジェットコースターに向かって歩き出した第二班は自然と列になった。
先頭は玖珂と平瀬。皆本の位置からはなにをはなしているか聞こえないが、なにやら楽しそうである。
平瀬の笑顔は久しく見ていなかった。皆本の前以外では常に笑っているのだろうか。
悩んでも仕方のないことだと皆本はため息をついた。
その次に歩いているのは麗野と藤川。二人に会話はない。
麗野はいつもどおりなのだが藤川が緊張しているようだ。こんな美少女が隣にいては緊張するのも無理はないが。
最後列を歩いているのは皆本と姫路だった。
「ジェットコースターは非常に危険です」
「ジェットコースターが怖いのか?姫路」
「違います! そんなに子供じゃありません!」
姫路はポカポカと皆本を叩きながら言った。
「そうじゃなくてジェットコースターは身動きが制限されて護衛しにくいです!」
「それはまずいね。どうするの?」
「重要なのは座る位置です。ジェットコースターは安全バーがあるので体が固定されてしまいます。よって手の届く範囲の人間しか殺せません。つまり平瀬さんの隣、もしくは後ろの席に座らなければ殺すことはできないはずです」
「ジェットコースター自体を爆破された場合どうするんだよ」
「その可能性は低いです。爆破は目立ちすぎますし、この班にエージェントがいた場合自殺行為になります」
「つまり平瀬を守るには平瀬の隣か後ろをおれたち二人で取らなければいけないのか。・・・・・・いやちょっと待って。昔漫画で読んだことがある」
「なんですか?」
「ジェットーコースターに乗っている最中に人を殺すんだよ。そして被害者の隣に座っていた女性のかばんから血のついたナイフが」
「なおさら平瀬さんの隣は死守しなくてはならなくなりましたね」
「人の話は最後まで聞けって。犯人は隣に座っていた女性じゃなかったんだよ」
「じゃあ被害者の後ろに座っていた人ですか?」
「それも違う。被害者の後ろの後ろだ」
「なんですかそれ?」
「犯人は新体操をやってたんだよ」
「すいません、意味がわからないんですけど・・・・・・」
「ちょっとみんなと握手してくる」
皆本は麗野に向かって言った。
「麗野さん、パンツ見せて?」
「ちょっと!」
豪快な音が響く。麗野は見た目によらず大胆なようだ。
「姫路。麗野さんにビンタされた」
「あたりまえです! なに言ってるんですか、って話し込んでいたらいつの間にかジェットコースターの目の前にいました!」
「気がつくの遅いだろ。しかもあいつら、もう乗り込んでるし」
他の四人はもうコースターに乗り込んでいた。仕方なく皆本もあとに続く。
座席に乗り込むと安全バーが下がってきた。たしかにこれでは身動きが取れない。隣に座っている人にすら手は届かない。どうやら姫路の考えは杞憂に終わったようだ。
「皆本さんに嘘をつきました」
隣の姫路がうつむきながらそう言った。
「なんだ嘘って?」
「わたしジェットコースター苦手なんです」
「それはなんとなく予想していたよ」
ガタガタと恐ろしい音を響かせながらレールを上っていく。空に手が届きそうになる寸前、皆本は目を閉じた。




