第1話 幼馴染には夢がない、、、
幼馴染。
それは日本のラブコメ業界で使い古されたものだと思う。
幼馴染とイチャイチャするようなラブコメが最近かなり多いと思うのだが一つだけ物申したいことがある。
あんなに優しい幼馴染なんて現実に存在しないと。
「本当、秋って何にもできないよね~」
「そんなことないだろ。雪音だってできないことの一つや二つあるんじゃないか?」
「それはそうだけど秋よりはいろんなことができるし」
そう。
僕の幼馴染である如月 雪音はいつも僕に悪態ばかりついてくる。
創作に出てくる幼馴染とは大違いだ。
「ぐっ」
それに言ってくることは正論ばかりなのでなかなか言い返すことができない。
昔はこうではなかった。
昔はもっと仲が良かったはずなのに中学に上がったくらいから僕に対してだけ冷たくなってしまったのだ。
「そんなんだからいつまでたっても彼女の一人もできないんじゃないの?」
「そういうお前だって今まで彼氏なんていたことないだろ?」
「私は別に作らないだけ。何回も告白とかされてるし。秋と一緒にしないでよね」
確かに雪音は中学のころから何度も告白されているのを見たことがある。
今までそのすべてを断っていたみたいだけど。
確かに一度も告白されたことのない僕とは格が違う。
「なんで作らないんだよ」
「はぁ? 別にそんなことあんたには関係ないでしょ? 気分じゃなかっただけだし」
綺麗な白い髪を揺らしながら彼女は腕を組んでそういった。
確かにこいつは僕からいても美人だと思う。
それこそ、そこら辺のアイドルや女優とかよりは美人だと思うけど中身がこんなんなんだから残念で仕方がない。
「なんで今私のほうをみてため息ついたわけ?もしかして喧嘩売ってる?」
「そんなんじゃないよ」
「本当かな?」
「なんだっていいだろ? というかなんでお前はいつも僕の部屋に入り浸ってるんだよ。自分の部屋に帰れよ」
「別にいいでしょ? 家隣なんだし居心地がいいからここにいるだけ」
まあ、別に僕は雪音のことが嫌いじゃないからいいんだけど来るたびにバカにされるとさすがにうんざりしてくる。
とはいっても、来るなと言ってもどうせこいつは僕の部屋に入り浸ってくるしいったいどうすればいいんだ。
「ん? 頭を抱えてどうしたの?悩みがあるなら聞いてあげなくもないけど」
「別に大丈夫だ。そんなことよりお前は自分の家に帰れ」
「いやだけど? なに? こんなに可愛い私と一緒にいられるのにそんなことを言うわけ?」
なんて自信だ。
まあ、可愛いのは事実だけどそれは外見だけだ。
といっても、学校や僕の両親の前では猫を被っているのでこの雪音を知っているのは僕だけだ。
「お前が可愛いのは外見だけだ。僕にもいつも被っているみたいに猫を被って接してくれたらいいんだけどな」
「いやよ。あれ結構疲れるんだから。あんたの前でまで猫被ったら私の憩いの場が無くなっちゃうじゃない」
どうやら僕の前で猫を被る気は微塵もないらしい。
なんでだ。
「はあ、」
「だからなんでため息をつくのよ」
「なんだっていいだろ。というかそろそろ遅いからマジで家に帰れ」
「う~確かにそろそろ帰らないとか。また来るね~」
「もう来るな」
僕がそういうけど聞く耳を持たずに帰って行った。
「もう高校二年になるんだから安易に男の家に上がるなっての」
少し呆れてしまうがどうせ彼女にそういっても改善する気は皆無そうなのであきらめる。
「でも、どうにかして雪音がこの家に来ない状況を作れないものか」
雪音と一緒にいる時間は嫌いではないけどあいつの煽りを毎日聞くのは精神衛生上あまりよろしくない。
それにたまには一人でいる時間が欲しいのだ。
一体どうすればいいのか。