遠藤さんとショーン 3
朝。靴箱に、舞奈と遠藤さん、そして小原さんがいる
「よお舞奈」
「おはよう舞奈」
「おっはよー!」
「んん!」
遠藤さんが怪訝な顔をする
「ラブレター?モテるね遠藤さん!」
「モテモテ」
「ええ、誰だ」
「どうせまた断るのでしょう?」
「断るの大変」
「あとで考えるよ。プライバシーだから差出人は秘密な」
「そうだね」
「真剣な恋、笑っちゃダメ」
大川先生の授業中、遠藤さんはこっそり中身を確認する
「放課後、校庭の隅?差出人は、……?!」
そして、放課後
小さな植え込みは人でひしめき合っていた。大川先生、小原さん、舞奈、そして私
「おにいちゃん、そこ触らないで、エッチ!」
「仕方ないでしょう、狭いのですよ。あ、先生もうちょっと右へ」
「お、おう。こうか」
「おおかわなんでいるの?」
「一大イベントだ。見逃すわけにはいかない!」
「おおかわのミーハー」
「小原さんは左へ」
「滅茶苦茶。来た」
遠藤さんだ。うしろにショーンがいる
ショーンが切り出す
「ここでいい」
「どうした、ショーン。改まって」
「あのね、遠藤さん。恋って、愛って、そもそもなんだろう。それには理由がいるの?」
ショーンが続ける
「今はさ、愛し合っても子供を産まなければいけないということではないし、ピルだってある」
舞奈がじーっとこちらをみている
「……おにいちゃん?」
「はい。」
「あとで話があるから」
「ピルはやりすぎだったかな」
「やっぱり。そういうところだよ、おにいちゃん」
ショーンがさらに続ける
「どちらかが破棄してしまえば、結婚も関係もおしまい。信頼関係ってそういうもんじゃない?もちろん、そうならないように、信頼してもらえるようになるよ。だから」
植え込みで皆が固唾を飲む
「股間で考えなきゃ」
「そっか、わたし頭で考えてたかも知れない。」
舞奈がじーっとこちらをみている
「……おにいちゃん」
「オチが必要かと思いまして」
「そういうのいらない」
「うぅ」
遠藤さんが呆れた声でこちらに話しかける
「お前ら、なにやってんだよ。出てこい!」
植え込みからわらわらと人が出てくる
「おいおい、また大集合だな」
「みんな協力してくれた」
「まあ、ショーンがそういうなら」
「バレてました?」
「もうちょっと上手くやれよ」
遠藤さんは呆れている。でも、どこかホッとした表情だ
大川先生が口を開く
「ほれ、帰ってパーチーだぜ!」
「うちに来るんですね。承知です。皆さんは?」
「邪魔するぜ」
「じゃ決まりね」
☆
うちでみんなでガヤガヤやっていると、舞奈が肩を叩く
「おにいちゃん、結局ショーンになにをアドバイスしたの?」
「結婚みたいなソリッドかつアンフェアな関係じゃなくて、最近はもっと異性間で、お互い対等にやっていくのが主流なんじゃない、っていっただけです」
「それが、信頼関係。なんか契約みたいだけど」
「どちらかが嫌がることをしたら、嫌っていえばいいってことですよ」
「そういう経験があるの?」
「ないですよ。青春は勉強に全部捨ててきました」
「ええー」
「昔、読んでも全然理解できない本があって。親密性についての本だったな。それを読み返しました」
「そんな本まであるの?」
「小難しいけれども、舞奈もそのうち読めるようになりますよ、きっとね」
「ふーん、面白そう!」
ひとつ向こうには、笑顔の遠藤さんと、楽しそうなショーンの姿がある。ひとの幸せをみるのは、楽しいものだ




