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記憶喪失になったら婚約者から溺愛されるようになりました  作者: 四十九院紙縞


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6/9

6.――「このタルトかケーキかで迷ってます……」

「少し久しぶりだな。体調はどう?」

「大丈夫、だと思います」

「それじゃあ、行こうか」

「はい」

 土曜日の昼下がり。

 侑誠さんは約束していたよりも随分と早い時間に、私を迎えにきてくれた。

 直前まで着ていく服に迷っていた私は、どぎまぎしながら侑誠さんを出迎えることとなった。今日の服、変じゃないかな。侑誠さんの好みに合ってるのかな。そんな不安でぐるぐるしている。

「ほら、流華はこっち」

 外に出ると、侑誠さんはすっと私を車道側から遠ざけた。

 その優しさがなんだかくすぐったくて、思わず頬が綻びそうになる。それを侑誠さんに見られるのはなんだか気恥ずかしくて、私は頬をぐにぐにといじって誤魔化した。

「今日も、いつもの喫茶店で良いんだよな?」

「はい。席は予約しているので、ご安心ください」

「予約?」

 私はなにか変なことを言ってしまったのだろうか、侑誠さんは不思議そうに私を見た。

「は、はい」

 頷いて、喫茶店から電話がきた経緯を話す。

 侑誠さんはぽかんとした様子で聞いていて、いよいよもって余計なことをしてしまった感が増していく。

「あの、もしかして私、余計なことをしてしまいましたか?」

 だから私は、率直に尋ねることにした。

 これまで予約していたのなら問題ないと思ったのだけれど、もしかしたら侑誠さんには内緒で行っていたのかもしれない。過去になにか一悶着あった可能性だって考えられる。

「いや、大丈夫。全然問題ないんだけど……その、流華が予約してたこと、僕は知らなかったから」

 そうして侑誠さんは、耳を赤くしつつ、言う。

「いつもありがとうな、流華」

 侑誠さんの不器用な微笑みに、私もつられて照れる。

「どど、どういたしまして」

 なんだか、居心地の良いような悪いような、ふわふわとした気分になった。

 ふわふわしていて、くつくつしていて。

 そうして、気づけば件の喫茶店に到着していた。

 席に着いて、各々メニューを広げる。

 季節のタルトとケーキがとても美味しそうだけれど、昼食を食べてからそう時間が経っていない今は、どちらかひとつが精々だろう。

「流華、なに頼むか決めた?」

「あ……ええと、ええと……」

 侑誠さんに問われ、慌てて決断を下そうとする。

 タルトか、ケーキか。

「なに、迷ってるの? どれとどれ?」

 メニュー表を共有するよう促され、私は正直に、

「このタルトかケーキかで迷ってます……」

と白状した。

「ふうん。……それじゃ、僕がタルトを頼むから、流華はケーキを頼みなよ。それで半分こすれば良いじゃん」

「い、良いんですか?」

「うん」

「やったあ! ありがとうございます」

 えへへ、と堪らず笑みが零れた。

 すると侑誠さんが、なにやら不意打ちを喰らったようにぐっと喉を鳴らしたが、急にどうしたのだろう。まあ良いや。タルトとケーキ、楽しみだな。



 侑誠さんとスイーツを半分こし、舌鼓を打ちつつ雑談に興じる。

 今の私にとっては雑談の引き出しがほとんどないのだけれど、侑誠さんがいろいろな話題を振ってくれるおかげで、私たちの間に沈黙が横たわることはなかった。

 こんなに楽しい時間を毎月過ごしていたのに、私はそれを忘れてしまっているんだ。

 そう思うと、胸が苦しくなった。


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