第五十六章 ---アビリティ・メジャメント--- (4)
岩山は上に行くほど崖が急こう配になった。
40m程の高さまで登ると、空が空を映した
量子パネルの天井だと判断できた。
先に上まで登った北道は、キャロラインに
手を伸ばし、引き上げた。
同じ様に青田、緑川と登頂に成功し、残る
マリア達を待った。
北道は身体を乗り出して、下を見るもマリア
達が登って来ている姿が見えない。
「・・・チッ!お前らは、ここから動くな。
偲、周囲に注意しろよ・・・」
舌打ちすると、北道は登って来たルートを
逆に降りて行った。
◇◇◇
A組のグループのスタート地点は、廃墟の都市
を模したエリアだった。
ベースボールのグランド八つ分程のエリアに、
崩れた建物群が覆い、まるで多くの爆撃を
受けた都市の様相を呈している。
所々で煙が立ち昇り、少し焦げ臭く、煙と
砂埃で眼も痛い。
また大きな瓦礫が、素早い進行を難しく
している。
ただ守備に関して言えば、隠れる場所も多く、
ライフルが許されるなら、最高のエリアとも
言えた。
現在持たされている銃は、射程はせいぜい
100m、それを越えると光が拡散するように
プログラムされている玩具だ。
辺りで一番、背の高い6階建てのビルに登り、
遠く先を見通す。
彼の名はベン・ジーメンス。
EUヨーロッパ連合の元ドイツ系民族にあたる。
身長185㎝、金髪ショートの天然の巻き髪で
目の色は茶系、22歳。
顔はキリッとして、落ち着いた年齢以上の
印象を与える。
(ベン・ジーメンス)
スーツを着ると、モデルの様なスラッとした
体形に見えるが、ジムで鍛えているのだろう、
白いTシャツに浮かぶ胸筋や、腕の上腕三頭筋
等が発達している事で判断できる。
彼は、財閥CEOの父と、プロピアニストの母
を持つEUジーメンスグループの次男だ。
彼には千里眼の能力もあり、開始から10分程
経つが、まだ周りを見渡していた。
後ろに立つ同じチームの女性が尋ねる
「ベン、どうするの?」
「うん。ここに居よう!僕たちはここを動か
ない。」
ベンが笑顔で振り返る。
後ろの彼女はエバレット・ハリントン、
ベンの幼馴染だ。
「解かったわ。貴方に任せる。」
染めた灰色の長い髪を、とぐろに束ねて
纏めて、ポニーテール的な髪形をしている。
目はブラウンで、体系的にはスリムでは
あるが、ミニグラマーな165㎝の女性だ。
バフ系デバフ系の魔法、回復系の霊法をも
操り、1回生トップの集まるAクラスでも
彼女は能力で3本の指に数えられる。
その横に初老の男が、長袖の白いTシャツを
着て、黒のジャージを上から羽織り、
気配を消して立っている。
「ベン様、これ右の壁沿いに進めば、Iとか
Jに当たるんじゃないですかのぉ?
Aクラスの多くのチームが右の壁沿いに
進んでおりますぞ。」
(マイキー)
もう一人同じチームに居るのは、ベンの
屋敷に20年仕える執事のマイキーだ。
年齢は50歳を超えていると思われるが、
オールバックの染めた黒髪に黒ぶちの
眼鏡をかけている。
視力の落ちた天然眼には、レーシック施術
が進み、直ぐに回復する。
今では人工眼球に変えている者も
多く、眼鏡をかける人間は少ないと言えた
から、クラスでも余計目立っていた。
マイキーも試験を一応受けて入学している
訳だし、ベンの執事だと言う事で、納得
してもらうしかなさそうだ。
「マイキー、それは悪手だよ。大学側も
簡単にJクラスをAクラスによって蹂躙
させると思うかい?」
ベンは振り返って、笑顔で話す。
「それは・・・そうですな。ベン様。」
ベンは続ける・・・
「右壁に沿ってよく観ると、毒の混ざった
大きな湖が有って、次に山とその向こう
には、天井までの見えない壁が存在して
いるんだ。」
マイキーは納得して、
「・・・ではその向こうにJクラスなどの
弱いクラスがいるという事ですな。」
「・・・そう。こちらから攻める時は、
まず左の壁を見て進んで、Bクラスから
Cクラスと、順に落としていく必要がある
ということ・・」
マイキーは続ける・・・
「ではベン様、この度はPvPは行わない
という事ですかな・・・」
何やらマイキーは、ベンを少し煽っている
のか面白くないという魂胆が透けて見える。
「マイキー、待ってればきっと、面白い
事も有るから。」
ベンは少しマイキーを、なだめる風に言った。
◇◇◇
川幅は10m~20m位、深さは深い所で2m
位だろうか。
正確には川の様な、人口的な水の流れを
大型機械装置で再現しているのだ。
川の対岸とこちら側には腰丈の雑草が
所々に生えており、こぶし大の石ころが、
対岸の堤防の麓まで多く転がるエリアが続く。
こちら側の堤防から、川を越えて向こう側
の堤防まで、ざっと500mはある。
赤く塗装された鉄橋が、その川の上に
渡されており、鉄橋の横幅は5m程しかない。
下の河原まで高さ10m近くあり、普通に
落下すれば大怪我に繋がる。
「君たち! この橋は危険すぎる!
渡らずに、反対に進むべきだろう!」
体育館で少し騒動を起こした
岩下・ジョン・正彦だった。
Bクラスは河川エリアからのスタートだった。
「皆、3人づつ一列縦隊で、慌てずに急いで
橋を渡りましょう!」
エフ分の1の揺らぎの声を持つ、綺麗な女性
に引き付けられるように、幾つかのチーム
が彼女の近くに集まる。
彼女の名はエミリア・ウィンガスター、
ユニタリカの銃の老舗、ウィンガスター家
の本家、グループ現CEOの孫娘だ。
金色のミドルロングの髪は、少し波打って
パーマネントの効果だろうか、すごく
ボリューミーで厚みのあるのが特徴的だ。
「君は馬鹿か!橋の上など絶好の的では
ないか!私は、あの岩下ジョンだぞ!」
岩下ジョンがエミリアに向かって命令口調で喚く。
「川沿いを進むのも、反対に進むのも、
自由です。
貴方は貴方の好きな方へ、お進みなさい」
「・・・何故、私の言う事が・・・」
岩下の言葉を遮って、エミリアは手信号で
他のチームへ指示を出した。
エミリアの近くにいたチームが順番に、
3人一列縦隊で、鉄橋を渡り始めた。
すでに堤防沿いを進んでいくチームも
結構いる。
「・・・ふん!後で後悔しても知らない
からな!」
岩下ジョンはブツブツ独り言を話し、その場
から動かない。
「・・・殿は、私が勤めます。」
そう言うと、最後にエミリアは橋を渡り始めた。
◇◇◇
「・・・お姉さま、あれは青い帽子、Dクラス
の子たちですね。
殆どがEクラスの方に来てますよぉ・・・
やっぱりEの方が弱いから勝てると思ってる
んでしょうか。」
(マリア)
崖の間の道をすり抜けて、マリア達は先にある
岩山に、重力を感じない程、簡単に登っていく。
一応、監視カメラが有るので、黄雅大国に
伝わる軽功に見せる。
「その後ろに、Cクラスが追い付いたわね。」
アリスがにっこりする。
「お姉さま、あの赤毛の子とか、常識のない
他の子たち、お救いになるのですか?」
マリアはあの子たち、0ポイントで帰れば
いいのよって思っていた。
「・・マリア、上のクラスの力次第で考え
ましょう。」
「お姉さま、基本、助けなくていいですよね!
あの子たちの為にならないですもんね!」
「マリア、見なさい、CクラスとDクラスの
撃ち合いが始まったわ!
そんなに隠れる所も無いのに、何を考えてる
のかしら・・・」
アリス
Cクラスのチームに、後ろから撃たれる
Dクラスのチームを眺めながら、
アリスはとっても楽しそうにしている。
(お姉さま、怖いです・・・)
マリアは心の奥底で、静かに思うのだった。
◇◇◇
有難うございました。
続きが読みたい。いい感じ。興味ある。仕方ないな。
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