第五十五章 ---BEAST--- (5)
まばゆい光に包まれたゲートを抜けると,、
周りは薄暗く床は金属の様に冷たい。
鉾りっぽい空気に、金属油や錆の匂い、
そして血の匂いも混じる。
「皆さん、無事ですかい?団長ォ・・・」
ダンケ副団長は心細気だ。
(ダンケ副団長)
白狼族のダンケは、特に嗅覚と聴覚が、
人間と比較して1億倍以上といわれている。
ダンケはゲートのまばゆい光の所為で、
視力だけが、まだ戻らないでいる。
(ゴッドネル)
「団長に副団長、大丈夫そうだな・・・
それにお二方も・・・」
白獅子族のゴッドネル艦長代理が、静かに
起き上がった。
「・・・私たちは大丈夫です・・・あっ!」
(バーミリオン)
ホワイト猛禽族の赤い服を着たバーミリオン
が答えた時、床に異変が起こった。
ト、ト、ト、ドッ、ドッ、ドッドッドォ・・
床から伝わる微妙な振動は、やがて大きな
振動へと変わる。
「古いが、これはスターシップだ・・・
床には、黒曜鋼合金が使われている・・・」
(紅竜族 ゲイル団長)
竜族のトップ、紅竜族のゲイル団長が話す。
「団長ォ・・・」
ダンケが情けない声を出す・・・
「皆さん、だいぶ前方に餓狼族3体を
発見しました・・・多分・・・」
(ゴメリー)
バーミリオンの部下で白い服を着た猛禽族の
ゴメリーだ。
ゲートの光にやられる事なく、薄暗い中を
1キロ以近く離れた囚人だった餓狼族たちを
発見していた。
「奴ら、生き残りが居たか・・・」
ダンケ副団長の口角が上がる。
「これ以上、近づいたら奴らに察知される。
まず状況を把握してから、動くのだ。」
ゴッドネルが呟く。
「たしかに今、無駄な戦闘は避けるべきだ。」
紅竜族のゲイル団長も呟く。
どこからともなく女性型の声がする・・・
「これより、海面に向け上昇開始します・・
・・・・・・・・・・・・・・
海面に向け上昇開始しました。
海面に向け上昇開始しました・・・
振動にご注意下さい・・・
振動にご注意下さい・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・
「・・・聞いた事の無い言語です・・・
どの星系の言葉でしょうか・・・」
バーミリオンが話す。
特にホワイト猛禽族のIQは200を超え、
量子脳無しで素の記憶容量も100ゼタ
を越える。
これは竜族に次いで優れた種族である事を
意味した。
ゲイル団長が呟くように言う。
「・・・これは多分、古代エデン語だ・・」
皆、驚きの表情になるが、流石に大きな声を
出す者はいない。
ゲイル団長が続ける・・・
「・・・これは竜族に伝わるお伽話しだ。
我々、ビースト各種族を創造なされた
女神-MIKOTO-、皆も名前くらい
知っていると思うが・・・」
「ああ、団長、ミコト教ですね・・・」
ダンケ副団長が口を挟む。
「竜族長が言うには、先々代の先々代の紅竜の
一代一億歳と言われる族長に引き継がれる
記憶・・・
現族長に精神感応で見せられた映像には、
大昔、我らビーストとエデン人と魔族の
戦闘の様子が映されていて、事細かに
観せられた・・・」
「魔族というのは、先程の恒星系に現れた、
黒龍の事か・・トラデスといったか・・」
父ライオネスの言った話を思い出し、
ゴッドネルが口を挟む。
「そうです・・・ゴッドネル艦長・・・」
ゲイルは小声で話を続ける・・・
「皆さん、艦長も目を閉じて下さい・・・
円になって身体の何処かに触れて・・・
龍族長から観せられた記録映像を皆さん
にも観てもらうとしょう・・・」
エンジンを組む様に、5体が丸くなって
手や羽と繋がった。
(フルプレートのエデン人)
続けてゲイル団長は言う・・・
「今の紅竜の族長が言うには、我らビースト
族は、魔族と戦うためにエデン人である
ミコト教の女神が創造した、優秀な戦闘
種族なのだと・・・」
全員の頭の中に、色々な場面が次から次に
映像によって、流れていく・・・
「強い。あの全身鎧がエデン人・・・
宇宙空間でもそのまま魔族と
戦ってる・・・」
バーミリオンが呟く・・・
「俺たちの船は、あまり進化してないな。
一体、どういうことだ?」
ゴッドネルは自問自答している。
ゲイルは少しヒートアップして続ける・・・
「その映像に映る全身鎧を付けたエデン人
の会話が、正に今聞こえた言語だ・・
観てもらった通りに、映像と音声で正確に
残っているのだ。」
「団長、押さえて下さいよ・・・」
徐々に大きくなるゲイル団長の声に、
ダンケ副団長が優しく言う。
「プラネットゲートを造ったのもエデン人、
我々を創造したのもエデン人か・・・
では、このスターシップもエデン人の
関わった物かもしれんな・・・」
ゴットネルがまともな推論をする。
またどこからか、エデン語と思われる言語で
話す声が響き渡る・・・
「・・・海上に出ます。
・・・海上に出ました。
・・・海上に出ました。
・・・衛星画像をスキャンしました。
・・・上空からの映像を映します。
・・・近隣の陸地を映します。
・・・ピピピ、グアムアイランド100キロ
・・・ピピピ、サイパン・・・300キロ」
すると、近くの空間に画像が開き、上空からの
映像と思われるものが観てとれた。
「・・・この惑星は空気も水も存在する・・・
観ろ、広大な水だ!水の惑星だ!・・・
あの土地に、小さな生物も見えるゾ!」
映像を観たゴッドネルが、驚き、大きめの
声を出てしまった。
「・・・気付かれました・・・」
猛禽族のゴメリーが呟く・・・・
1キロ近く前方に居るデクー達が、振り返り
「・・血や機械の匂いで判らなかったが、奴ら
生きてやがったか・・・
お前ら、戦闘態勢だ!同時に出口も探せ!」
餓狼族の1体はここの壁沿いに残り、デクーと
もう1体は、低い出入口を屈んで外通路へ出た。
4m四方ほどの白く自然発光する通路が続き、
突き当りにパネルの付いた両開きの扉があった。
デクーを先頭にもう一体も、身を屈めながら
通路を、突き当りまで進む。
デクーが突き当りの操作パネルに触れると、
上向き下向きの矢印が現れる。
上向きの矢印に触れると、両開きのスライド式
のドアが開いた。
中の空間は、4m四方くらいで、ほぼ正立方体
の箱と言えた。
「殿の奴も呼んでこい・・・」
デクーは殿に残した部下を呼びに行かせる。
呼びに行かせた餓狼族1体だけが、なぜか
帰ってきた。
「・・・チョロのヤツ、扉の付近に居ませんで
ひょっとして、後から来た奴らと・・・」
戦うかどうか確認に戻ったようだ。
それとヤツはチョロという名だったか・・・
デクーは部下の言を遮って、
「これは多分、昇降機だ。
スペース的に乗れるのは1体が限度だ。
悪いがお前に殿を務めてもらう、残れ。
俺が上に向かうと、お前もこのパネルの
上の印を触るのだ。
そしてお前もすぐに乗ってこい。」
デクーは指示して、昇降機に乗り込んだ。
床や壁や天井から、自然光が差す。
「・・・スキャナーを開始します・・・
クリアしました・・・上に向かいます。」
また意味の解らない女性型の声がして、
扉がゆっくりと閉じた。
Gは全く感じないが、上へ向かっている
確信はあった。
30セコンドほどで扉が開いた。
昇降機内のパネルにパンチを入れる。
ガラスだろうか、粉々に表面が割れて、
セーフティロックで閉まろうとする扉を
直ぐに手で押さえて外に出た。
後ろで扉が強めに音を立てて閉まるのが
判った。
そこは50m四方ほどのスペースで、床は
グレイでタイルの様な縦横の切れ目がある。
天井はドーム型で薄っすらと自然光のような
灯が射していて、全体がそこそこ明るい。
室内の床の真ん中に一段だけ、高くなった
直径6メートル程の円形の舞台がある。
舞台円の外に太い黒曜石で出来たような
四角柱があり、その上に操作パネルが
乗っているのが、デクーにも見て解った。
急いでその舞台に上がり、操作パネルに
触れる。
操作パネルが反応して、箇条書きの文章が
5行現れた。
デクーは、とりあえず一番上を触る。
ゴ、ゴ、ゴ、ギュー、ゴ、ゴ、ゴ~ キー
錆びた金属が擦れるような、重い音が続き
ドーム型の天井が真ん中から、ゆっくりと
開いていく。
デクーは手持ちの布で鼻を覆い息を止める。
真ん中の隙間から貯まった水が、雨の様に
降って来て直ぐに止む。
デクーは落ちて来た水を手にあてて、
水を溜める。
(気圧は問題ない、侵入した気体ガスは
今の所、身体に影響はなさそうだ・・)
少し息をしてみて、気体を肺に入れた。
(呼吸して問題なさそうだ・・・)
喉が渇いていた為、手に溜めた水の匂いを
嗅いでみる。
何の臭気も無いので舐めてみる。
「ゲホ、ゲホ、ゲホ、・・・塩水か。」
(クソー余計、喉が渇くぞ・・・)
ドームが開ききり、直径20mほどの空間が
出来て、青い空が覗いている。
(ついてる!俺たちにも問題の無い気体
構成だ!)
開いた隙間から、太陽の明かりが射して、
室内が少し暖かく、これまでより明るくなる。
操作パネルを見ると、先程の昇降機のように
上矢印の入った文章、下矢印の入った文章、
記号の無い文章と3行に減っていた。
デクーは迷わず上矢印の入った文章に触れる。
ス、ス、スーーーーーー
ほとんど音も無く、床の円盤が浮き上がって、
上昇して、天井に開いた大きな円に隣接して
停止する。
「・・・何だこりゃ~
うーーーひゃっほうッ~!!」
デクーは周りに広がる塩水の海、目の前に
ある小人のいる大陸を見て、狂気の嬉しさ
が爆発していたのだった。
「待ってろよ、俺が征服してやるぜ・・・」
◇◇◇
有難うございました。
続きが読みたい。いい感じ。興味ある。仕方ないな。
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