第五十二章 ---BEAST--- (4)
「クソーッ!ゴッドネルの奴め・・・
オッ・・・オイ!みんな大丈夫か!
いきなり吹き飛ばしやがって!」
周りは真っ暗で、壁に機械のパネルだけが
赤や緑に光っている。
「あぁデクーの兄貴・・・いてて・・・」
生きているのは、デクーを含め3体だけの
ようだ。
非常灯のような薄明かりが自動的に点いた。
重力は弱めだが支障ない。
近隣には、爆発の瓦礫とビーストの身体の
一部である手足が散見された。
運よく爆風だけでゲート内に吹き飛ばされ、
3体は全員 怪我らしい怪我も無かった。
室内全体は機械工場のような感じで、非常灯
の灯る天井や壁まで30m位はあるだろうか。
床も含め黒曜鋼合金で出来ている事は、ある程度
察しがついた。
金属の異臭というか金属粉の匂い・・・
ビーストの餓狼族の鼻は、退化していても
人間の100万倍は優れているといわれる。
(ここは、古い宇宙船の中なのか・・・)
パネル類に積もる灰色っぽい砂の様な埃を
観てデクーは、想像した。
彼は宇宙艦隊の惑星制圧戦闘員として、
働いていた過去がある。
惑星制圧において、大きな規律違反を何度も
犯し、監獄惑星に送られる程の大罪が結審し、
局所銀河群内にある、銀河系内の、コバシリ
刑務星へ送られる最中でもあったのだ。
デクーは周りを見回したが、プラネットゲート
は、何処にも見当たらない。
(ゲートが無い・・・何もない空間にゲートが
開いたというのか・・・解せん・・・)
「・・・お前ら、移動するぞ。気を付けろ、
周りの機械を勝手に触るなよ!」
デクーを先頭に三体一列で、広い通路を進んで
行く。
空間全体をよく観ると、球形に近い卵の形状
で、50mほど先で球い天井が床と繋がり、
そこに扉があった。
真ん中から両開きにスライドする扉は、高さ
が2.5m程しか無く、ビーストより背の低い
生命体による、構造物であると予測できた。
(・・・小人が出て来た所で、問題ないな。
・・・さて、どうしたものか・・・
取り敢えず、コックピットを探すか・・・)
デクーがあれこれ、思考に耽っていると・・・
トトトト・・・ドッ、ドッ、ドッ、ドッ・・・
微妙な振動は、やがて大きな振動へと
変わった。
デクーら3体は、肩を貸し合い捕まって、
低い姿勢を取っていた。
「・・・あの扉の近くまで移動するぞ!」
デクー等は低い姿勢のまま、扉の横の
壁に並んで貼り付いた。
背中に冷たい物を感じる・・・
広い室内に、女性の自動音声が流れる・・・
「これより、海面に向け上昇開始します・・
・・・・・・・・・・・・・・
海面に向け上昇開始しました。
海面に向け上昇開始しました・・・
振動にご注意下さい・・・
振動にご注意下さい・・・」
デクー達には、何を言っているか解読不能
だった。
ただ下方向へのGが加わった事で、惑星上
か、又は人工重力を発生させている巨大な
構造物内で上へと向かっていることは、
間違いないと判断していた。
「お前ら、この船から出られるかも
知れねぇぞ!」
「・・・デクーの旦那、宇宙服はどう
しやすか?」
デクーは少し考えて、
「てめぇら、この船をよく観ろ、恐ろしく
古いが、最先端の科学力だ。
黒曜石を重黒曜金属に、加工してやがる。
多分、緊急避難用のポッドのはずだ。
生物が生きられねぇような所に、
隠す訳 無いだろうがよ・・・」
あんまり自信は無かったが、自分で言って
みて、多分そうにちがいねぇと納得させた。
そのデクーの言は実際、ほぼ当たって
いると言っても過言ではなかったのだ。
◇◇◇
地球時間で約1億年前、エデンの技術力
を集めた元の大型宇宙船には、ダーシィ
(お伊勢様)を始めとした、各惑星代表
の優秀な科学者たちと、数千体の軍事用
アンドロイドが搭乗していた。
現宇宙の皇太子である、デイタリウス
殿下、直々の指令を、この辺境の
局所銀河群で成功させるため、
ダーシィ(お伊勢様)は各星系の科学者
の粋を集めたのだ。
(高等生物を自然発生させる土壌を
持った惑星を、開拓する事。)
言葉にすれば簡単だが、環境の整う惑星を
捜すことが、まず一番の問題であった。
局所銀河群の中では、アンドロメダ銀河が
最大で、次にたまたま重力的に相互作用
のある、この銀河系が大きな恒星集団である。
これらの中には数兆の恒星が存在し、
その恒星の周りを惑星群が軌道を描いていた。
それらの中からハビタブルゾーンの軌道を
とる岩石惑星を探し、高等生物が育つに
当たり、邪魔となるウイルス、細菌、動植物
まで調べ上げ、プレートテクトニクスによる
火山活動や地震など、数万年単位でシュミ
レートした。
場合によっては、その邪魔となるものを
消し去り、進化を促すDNAを既存の
生物群に与え続けた。
(DNA:生物の遺伝情報を担う化学物質)
それらの動植物群のデータを取り、地球時間
でいう千年単位で観察に戻って来るのだ。
その為にエデンの残した、ガルエデンにしか
存在しなかったエキゾチック物質を使った
プラネット・ゲートを、1惑星につき、
1基~2基残して行ったのだ。
ビーストの使うエキゾチック物質は、四次元
量子と呼ばれる幾つかの微粒子の種類があり、
それらの中の数種を合わせ重力エネルギーを
使って、宇宙船による数万光年のジャンプを
実現していた。
しかしエデンの創造したゲートには遠く
及ばない。
ジ・アースにおいては、まだエキゾチック
物質は、今現在でも発見されておらず、
予測の範囲でしかない。
エデンは最終的にエデインと呼ばれる
エキゾチック物質である5次元素粒子を
発見した。
そしてプラネット・ゲートを造り上げたのだ。
このエデイン素粒子は、惑星ガルエデンの
地下の鉱脈にしか存在しない。
数千万光年を、行き来できる五次元ホールを
ついに完成させたのだった。
因みに、このエデインをもってしても、
宇宙の内包する時間を、遡及させることは
不可能だった。
厳密には10の23乗分の1秒、過去に戻れる
とガルエデンの科学者たちは算出した。
ただゲートを抜けた時、未来に対しては
タイムラグが生じる事があった。
このプラネット・ゲートは正真正銘のA地点
から他惑星のB地点を繋ぐ 亜空間トンネル
であり、Aにある分子配列をBにコピーして
再構築するようなものでは、無かった。
どんなに離れていても、行き先の星系の惑星
座標を入れ、ゲートを抜けると瞬間にゲート
出口に抜けた。
タイムラグは実際のゲートを抜ける徒歩時間、
未来に向け5~10秒程度だった。
しかしランダム的に最高で1時間程度のタイム
ラグが発生する事がガルエデンに報告された。
その未来に向けた1時間程度のラグが、
なぜ起きるのか判明させる時間が無いまま、
プラネットサンにガルエデンは飲み込まれ
星の生涯を閉じたのだった。
ガルエデン無き今、ゲートの存在がトラデスや
ビーストを進化途中の惑星へ招き入れている
状態となっていた。
こういった事が元となり、アリスは、それなら
いっそ、ゲートを無くしてしまおうと、
考えたのだった。
◇◇◇
このお伊勢様の当時乗っていた大型艦から
射出された小型艇の内部が、現在デクー達
の居る場所だった。
約6500万年前から海溝に沈み、プレート
テクトニクスによる海底火山の噴火や、岩盤
移動、隆起などがあっても、自動で海中を
安全に立ち回る事の出来る、人工知能の付いた
小型宇宙艇であった。
気圧の変化のせいか、耳が少しツンとする。
気圧コントロールはされているようだ。
「・・・海上に出ます。
・・・海上に出ました。
・・・海上に出ました。
・・・衛星画像をスキャンしました。
・・・上空からの映像を映します。
・・・近隣の陸地を映します。
・・・ピピピ、グアムアイランド100キロ
・・・ピピピ、サイパン・・・300キロ」
空中に画像が開いて衛星からの近隣地図が
表示された。
青く島が囲われ、海に浮かぶ、こちらの
楕円形のポッドからの直線距離が、表示
されているようだ。
上空からの映像がどんどんUPになっていく。
グアムアイランドと呼ばれる島には、道を
走る機械車両や歩く小人が大勢、見てとれた。
「・・・お前ら、あれを見ろぉ。」
自然に口角の上がるデクーだった。
有難うございました。
続きが読みたい。いい感じ。興味ある。仕方ないな。
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